俊光と菜子のホントの関係
第28章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(後編)』
「また激痛で叫びそうになったり、蹴り飛ばしたくなったりしたら、左手を上げろ」
「……ぷっ、あははっ。やだぁー俊光君。バレンタインの時、私が虫歯ゼロアピールをしたら、『俺は歯医者かっ』ってツッコミを入れてたのに、『左手を上げろ』なんて言っちゃって。結局、自分から歯医者さんみたいになってるじゃん」
菜子にコロコロと笑われながらツッコまれた。けど、確かに。歯医者かって感じだよな。真面目なつもりだった分、恥ずかしくなってきた。俺って、いまいち締まらないのな。
「それに、心配しなくても大丈夫だよ! 私、実はね、アソコの痛みに耐えられるように、特訓をしたんだー」
菜子は寝ていながらも、丸出しになっている豊かな胸を、「えっへん!」と誇らしげに張り、皿の上のプリンみたいにプルンと揺らした。
「は? 特訓って、どんな?」
揺れた胸に興奮を覚えるよりも、疑問を持った方が先に来て訊くと、菜子は自慢げに話してくれた。
……あぁ、なるほど。だからか。
明里ちゃんに手伝ってもらってまでしたという特訓の内容を聞いて、俺の中で、この間からずっと謎に思っていたことが、ここでやっと解けた。
食卓で、菜子がおかずを取ろうと手を伸ばした時に見えた、腕の不自然な赤っぽいアザも、
ティッシュを両方の鼻の穴に詰めて家に帰ってきたのも、
突然、両瞼が、目が半分閉ざされる程に腫れぼったくなっていたのも……
その『特訓』とやらで出来たものだったのか。
誰が聞いても『わざわざそんなことをするなんて、バカだなぁ』と呆れ返るような特訓をしてまで、俺と繋がろうと思ってくれていたのか。
お前ってヤツは、ホントに……。
込み上げてくる愛おしい気持ちを込めて、菜子を強く抱きしめた。