俊光と菜子のホントの関係
第28章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(後編)』
旅館内も、少しずつ目を覚まし始めている。静かに歩き回る足音や、気を遣って遠慮がちに抑えて話す声が、耳を澄まさなくても聴こえてくる。
これで菜子が万が一、あの時同様、大袈裟に叫んだりしたら……
若女将さんとかが血相を変えてやってきて、『お客様っ、どうなされましたかっ!?』って無作法に開けられてしまう。それこそ、人生最悪の『オーマイガーッ!』だ。想像だけでも青ざめる。
お互い好きで、お互いしたくてする行為なのに、ここに来て、急激に酷なことに思えてきた。
「……菜子。やっぱりやめようか」
すっかり及び腰になって、菜子から引き抜こうとした。
「だっ……ダメェ!」
「だぁーっ!」
菜子がアソコに力を入れてきて、俺は悶絶した。
やーめーてーくーれぇーっ! 熱い上に極狭い中で、強く締め付けてくれるなっ! まだ数センチとはいえど、冗談抜きで果てるっ!
「やめるなんて、絶っっ対にダメェーーッ!」
俺の諸事情を知らない菜子は、容赦なくギュウギュウ締めて、駄々をこねる。
「だっ、だけどお前っ、ずっと左手を上げたそうにしてて、ものスゲー痛そうだしっ(俺ももう、即・果てそうだしっ)」
「確かに、特訓の痛みなんてちっぽけなもんだったって思い知っちゃうぐらい、アソコが激鬼痛いけどっ……。それでも、一回目の時よりかは我慢出来そうだし……それに……それに私っ……どうしても、俊光君の恋人にもなりたいんだもんっ!」
「菜子……」
お前、そんなに俺のことを……。なのに俺、簡単にやめようとしたりして……。
菜子の強い気持ちに、思いっきりビンタをされたみたいだ。及び腰だった俺は、目が覚めた。
「ごめんな、菜子」
「ホントだよぉー! もう途中で抜こうとしないで! おしまいまでちゃんとズドンしてよぉー!」
「ぐわっ……! わかったっ、わかったからっ、あんまり締め付けないでくれっ!」
とはいえ、痛いことには変わりはないだろうし。どうしたものか……
そうだ。いつまでもゆっくり挿れようとしてるから、いつまでも痛いんだ。
痛いことは、一瞬で終わらせた方がいいよな。
よし。
俺は決めた。