俊光と菜子のホントの関係
第4章 『私と俊光君』
「……言いふらしたかったら、いいよ?」
「っ、誰がそんな気持ちわりぃこと言いふらすかよっ!
お前って、ホンットにバカじゃねーのっ!」
……山田、真っ赤になって怒りながら走って行っちゃった。
「……菜子。今の、ホント?」
「うん……」
「けど……」
「うん、わかってるよ。だけど、自分の気持ちにはウソはつけないんだ。
だからって、本気で恋人同士になろうってワケじゃないんだよ? 私と俊光君は兄妹だっていうのは百も承知だもん。
だから、気持ちが冷めるまで、勝手に好きでいるだけにするんだ。そのうち他にいい人が現れるかもだし……ね!」
「あ……菜子ぉ……」
明里が寂しそうな表情をする。
明里……。私、ホントはね……恋人同士になってみたいって思ってるんだ。
原宿の時みたいに私の中でだけでなくて、俊光君も実際に私のことを『一人の女のコとして好き』って想ってくれる、ホントの恋人同士に。
なってみたいけど、どう考えても無理だもん。
――私と俊光君は、兄妹なんだから。
はぁ……それを何回も言い聞かせてるのに、何回でも目が熱くなっちゃうなぁ。
私は袖で、目をゴシゴシ拭いた。
「あは。ごめんねー明里ぃ。気持ち悪いでしょ?」
「っ、バカッ!」
「あたっ!」
いったーい。頭にチョップされたぁ。
「自分の俊光さんへの想いを、気持ち悪いとか言わないのっ!」
「だ、だってぇ……」
「……はぁーあ。菜子の兄ラブの強さには、ホント脱帽もんだわー。まぁ、あの俊光さんなら――
妹が本気になって好きになっちゃうのも無理ないかもねー。性格いいし、結構イケメンだし」
「え……明里……」
定番になりつつあるセリフ。
明里……私のことを受け入れてくれるの?
「だから、しょうがないでしょ。ね?」
「あ……ありがとぉー明里ぃー……」
「もう、朝から泣かないでよぉー」
「だって、嬉しいんだもん……」
「山田なら、ホントに言わないと思う。何となくそんな気がする」
「うん……私もそんな気がした」
というわけで……ごめんね、俊光君。こんな妹で。
だけど、絶対に気持ちを打ち明けないし、俊光君を困らせたりしないから。
だから、安心してね。