俊光と菜子のホントの関係
第4章 『私と俊光君』
「――ご、ごめんなさーいっ! 私、明里だと思ってベタベタ触っちゃって!」
私は明里の部屋で、土下座する勢いで謝った。
明里の隣に座る――明里そっくりの『男の子』に。
「菜子が謝らなくていいのよ。
悪いのは『ワタシのフリした』晃(ひかる)なんだから」
「ごめんなー。明里の友達が来るって聞いてたから、挨拶代わりにからかってやろうって思って」
「でもぉ……」
恥ずかしー。抱きついたり胸触ったりして。
まさか、ホントに男の子だったなんて思わなかったー。
「だけど全然知らなかった。明里が『双子』だったなんて。勝手に一人っ子かと思ってたよー」
明里とは二年近くの付き合いなのに、今ここで初めて知ったよ。
「そうよねー。晃、今まで家にいなかったし、ワタシも言ってなかったしで。
晃はね、私立のエスカレーター式の男子校で、中等部は寮生活必須だったの。で、卒業したから家に帰ってきたってワケ。
ちなみにワタシが姉で、晃が弟なんだよ」
「そうだったんだー……」
はぁー……こうして見るとホントそっくり!
晃君って男の子なのに、明里と同じ顔してるから女の子みたい。
双子だってわかっても、もう一回同じことされたら、私また騙されちゃうかも。
「あ。だけど、さっき声もそっくりだったよね? 今は低いけど……」
「あーあれね。オレ、声も変えることが出来るんだ。
『こんなふうにね』」
「すごーい! モロ明里っ!」
「ワタシも出来るわよー。
『オレ……どうやら菜子ちゃんに一目惚れしちゃったみたいなんだ』って! シシシッ」
「ホントだー…………え?」
今の例文は……何て?
「っ、明里っ! てめぇ、オレ初対面なのに! 菜子ちゃんの前でいきなり変なこと言うなよっ!」
「だってー、さっきから菜子のことジーッと見てるんだもーん。玄関先でも珍しく照れまくって動揺しまくってたみたいだしぃ?」
「だぁーもうっ! 余計なこと言うなって!」
「ふーんだ。ワタシのフリした罰でーす」
「うぅー、くっそー。あとで覚えてろよぉ……」
あははっ。二人とも仲がいいなぁー。
双子って可愛らしー。普通の兄妹の私と俊光君とはまた違う感じ。
……明里は私みたいに、実の弟の晃君を好きになったりはしないよねぇ……。えへへ、なんてね。