俊光と菜子のホントの関係
第4章 『私と俊光君』
それからも三人でお話をしてから、晃君は部屋から出ていった。
「……ねぇ。明里のお父さんかお母さん、今日私の髪切ったりとか出来るかなぁ?」
「あー、今日は予約がいっぱいって言ってたよー。
何、菜子。髪切りたいの?」
「うん。高校生になるから、ちょっとイメチェンしたくて。ずっとロングだから、肩ぐらいまで切ってみたいなーって。
例えば……女優の北原景子さんみたいなキレイなセミロングとか。あーでも、石川さとみちゃんみたいなフワフワヘアーも憧れるなぁー。とにかく、今の自分とは違う感じにしたいんだー」
高校は髪型自由で、下ろしてもいいから嬉しー。
違う髪型にして大人っぽくなったら、俊光君と釣り合うよね。したらもっと『恋人同士みたい』って言われちゃうかもー。んふふ。
「ふーん……そんなら、ワタシが切ってあげるよっ」
「…………へ?」
「ほら、ワタシはアレンジとか得意でしょ? 髪も切るくらい、訳無いんだよ?」
「確かにアレンジは上手だけど、カットはまた違くない?」
「だーいじょーぶよっ! マネキンでも練習したりしてんだからぁー」
明里ってば……ビニールのレジャーシートとカットケープを出してきて、勝手に準備をし始めてる。
本人は自信満々だけど、私はどうしても嫌な予感しかしない。
「あ、明里やめて。いくら練習してても、明里がやるってのが不安……」
「失礼ねー。あのね菜子。さっきの晃の髪、あれ誰がやってると思う?」
「えっ? もしかして、明里?」
「ううん。あれね、晃が自分で切ってるんだよ!」
「ウソ! あんなオシャレな髪型を、自分で?」
「アイツの腕前、お父さんとお母さん、更に他のプロのお墨付きなんだよねー。練習がてら、男子校の友達の髪もよく切ったりしてるみたいだし」
お墨付き……。それって、天性の才能ってヤツじゃない?
「でも……ちょっと待って。今のって晃君が上手いって話でしょ? 明里じゃないじゃん」
「ワタシ達双子だよ? だから腕前もそっくりだって言いたいのっ」
そんなの絶対ウソだって、直感が教えてくれてる。
「やっぱり明里はやめて。なら私、晃君に切ってもらう」
「もう、菜子! ワタシを信じてっ!」
……お母さんが言ってた。『自分で〝信じて〟って言うヤツは、信じちゃダメよ』って。