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愛が、はじまるとき

第1章 1

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 そう言ってくれていたから、付き合っていた彼のことが、もう、自分でも、どうしたらいいのかわからなくなり、姉よりも、満に相談しようと思った。
 ほとんど初対面なのに、悩みがあるのかと聞いてくれたのは、人間観察の眼がすぐれているからだと、思ったからだ。
 「わたし、彼が、わからないんです」
 「どういうところが?」
 「自分勝手、すぎるんです」
 「もっと、
  具体的に、話せますか?」
 「いちばん、そう感じるのが、
  あのときなんです。
  恥ずかしい…」
 「里美さんが、
  言いにくかったら、
  言わなくてもいいですよ」
 「でも…
  それを言わなければ、
  先生に、伝わらないと思いますので…」
 「じゃあ、
  言いにくいところは、ぼかしてもいいですから」
 わたしは、満なら、親身になって、相談にのってくれると思っていたので、あまりぼかすことなく、詳しく話すことにした。
 「わたしに、口に入れろ、と言うんです」
 「えっ、
  命令口調なんですか?」
 「いいえ、
  彼の言葉どおりに言えば、
  『入れてくれないか』です」
 「それでも、
  命令に近いですよね」
 「ええ」
 「里美さんは、
  嫌なんでしょう?」
 「はい」
 「嫌と、言わなかったんですか?」
 「言いました。
  できないわ、と」
 「そしたら?」
 「僕を好きなら、できるはずだ、って言うんです」
 「彼は、
  なにか、勘違いしていますね」
 「勘違いですか?」
 「そう。
  セックスについての、
  勘違い」

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