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愛が、はじまるとき

第1章 1

              3

 そのあと、満は、セックスについての話を、してくれた。
 人類が、子どもを産むためのものであったセックスから、楽しむためのセックスを発見してからずっと、セックスは、女性が気持ちよくなるためのものだった、と言うのだ。
 その証拠に、女性には、快感を得るためだけに存在する、クリトリスがあると言う。
 それなのに、いま多くの人がしているセックスは、男性が射精するのが目的となっているみたいで、間違っていると言うのだ。
 だけどそれは、階級がうまれ男性優位の社会になってからの、たかだか数千年くらいのもので、人類の二十万年という歴史からみたら、ほんとに短いので、いずれ、セックスは、女性が気持ちよくなるためのものに帰っていく、と言うのだ。
 わりと長い話だったが、セックスは、女性が気持ちよくなるためのものだというのが、よくわかった。
 「里美さんは、
  セックスを、気持ちいいと思ったことは、
  ないんでしょうね?」
 「ええ」
 「じゃあ、
  どうして、彼と…」
 「しかたなくです」
 「可哀そうに」
 思わず、ポロッと涙が落ちた。
 満に、可哀そうにと言われたことで、彼の、強引さがはっきりわかったし、それに、嫌と言えない自分を、情けなく感じたのだ。
 それに、満の、優しさが、嬉しくて。
「したくないと言ったら、
  怒るんです」
 「ひどい奴だ。
  そんな奴とは、
  別れたほうがいいですよ」
 「そう思っているんですが…」
 「じゃあ、
  なぜ?」
 「いちど、別れたいと言ったら、
  怒りだして、
  怖かったんです」
 「DVですよ」
 「やっぱり、
  DVですか?」
 「そうですよ。
  彼のような場合、
  セックスDVと、
  私は、言っています」
 「セックスDV?」
 「まあ、
  私が、勝手にそう呼んでいるんですが
  でも、ピッタリでしょう」
 「そうかもしれません」

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