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愛が、はじまるとき

第1章 1

              6

 それでも、満は、優しく、話をしてくれるだけだ。
 わたしは、なんだか、母に抱かれているような気分になった。
 満が、男が、あれを大きく固くして、隣にいるのに、母と思うのは、おかしな気分だけど。
 それだけ、わたしが、満を信頼しはじめたということだろう。
 いつ、眠ってしまったのかわからないが、気が付いたら、朝だった。
 わたしが、あわてて起きようとしたら、満は、
 「きょうは、休みでしょう」
 と言い、
 「さあ、
  こっちに、いらっしゃい」
 と言いながら、抱いてくれた。
 優しく抱いてくれながら、
 「もうすこし、
  眠ったらいいですよ。
  眠って、
  彼のことは、忘れなさい」
 わたしは、満の胸に顔をうずめて、しくしく泣きだしていた。
 悲しかったのではない。
 満の優しさが、嬉しかったのだ。
 その日から、わたしは、彼のことは、忘れた。
 そのかわり、わたしのなかに、満が、住みだした。
 なにより、あの晩の、優しさが、嬉しかった。
 だから、思わず、泣いてしまったのだ。
 そして、満のことを思うと、胸が熱くなる。
 あの優しさを、もう一度、味わいたいなあと、なにかにつけて思っているわたしがいる。
 わたしは、優しさに、飢えていたんだと思った。
 そして、いままでのわたしなら、考えられないが、自分から、
 「こんど、
  泊まりにいっていいですか?」
 と、言ってしまったのだ。
 満は、
 「いいですよ。
  こんどは、ゆっくり、
  私といることを、楽しんでください」
 と、言ってくれた。

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