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愛が、はじまるとき

第1章 1

              8

 わたしは、浴槽の中で、満に背中を預けて、満は、腕を乳房から離して、抱いてくれている。
 満に、からだを預けていることが、とても快い。
 満は、わたしの仕事のことや、趣味のことなどを聞いてくれた。
 わたしは、風呂に入っているというよりも、ベランダでゆったりとコーヒーを飲みながら、くつろいでいるような気分だった。
 満は、性的な話は、しなかった。
 あらためて、「この人は、ほんとに優しいんだ」と思った。
 浴槽から出て、
 「里美さん、
  ここに、腰かけて」
と言い、全身を洗ってくれた。そして、あそこも、洗ってくれた。
 満の指が、あそこに触れてくるのが恥ずかしくて、ギュッと目をつぶった。
 でもそれも、あそこを意識して洗っているというのではなく、背中や手を洗うのと同じように、洗ってくれている。
 満は、ほんとに優しかった。
 下着だけになり、布団に入ってから、しばらくは、わたしを、抱きしめているだけだった。
 「里美さん。
  これも脱ぎましょうか」
 「はい」
 「はだかで抱きあう気持ちよさを、
  感じてください」
 この人は、ほんとに、わたしの気持ちを、考えてくれているんだと思った。
 わたしは、セックスといったら、ベッドに横になるとすぐに、わたしの中に入ろうとするものだと思っていた。
 満は、「セックスは、二人でするもの」ということを、わたしに、教えてくれようとしている。
 はだかで抱きあうのが、こんなに気持ちいいものだと、はじめて知った。

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