月が綺麗な夜は。
第1章 歪んだ二人
「……くだらねえ、帰れ」
「真剣に話しとるんじゃっ、
毎度銀時の話を聞かせると
おんしゃ唇噛み締めて、俯きよるっ
否定せん言うことはやはりそうとしかっ…」
柄にも無く次から次へと捲し立てるように
言葉を発する坂本に、我慢ならず、
胸ぐらを掴みあげた。
「…うるせえって言ってるのが聞こえねえか」
「………」
俺なんて眼中にねえのは分かっていた。
だが一番心外な事を言うもんで、
俺の口からは何故か……
「……だったらなんだ……
てめぇは奴を寄越してくれるってのか」
「…なっ…やはりな」
この気持ちはこいつには、知られたくねえ。
だからいっそ、勘違いしてくれる方が
有難いかもしれねえ。
「……高杉、おまんには銀時はやらんよ」
「……へぇ、じゃあ何故聞いた」
「…わしは、おまんが疎ましい
わしの知らん銀時をおまんは良く知ってる
一番銀時には近づけとうないんじゃ」
眉を寄せ、切ない表情を浮かべる。
俺の知らない表情。
ただ銀時だけを想い、浮かべる表情。
それを見て、俺の中の何かが切れた。
「……ククク」
「……高杉」
もしかしたら、上手く行けば、銀時が
俺とこいつをつなぎ止めてくれる
材料になるかもしれない。
「…おもしれェ。
そうだなァ、
お前ェさんより銀時の事はよく知ってるよ
嫌なくらいなァ
俺がお前から銀時を奪おうとすれば
簡単に…」
「…やめろっ、それだけは許さんぜよっ、」
俺の肩を掴み、大声をあげる。
「……そんなに銀時が好きか」
「…ああ……頼む、それだけはやめてくれ」
そう言い、力なく床に膝をつき、額を擦りつけるように土下座をした。