こいぐるい
第1章 おんな
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『で、ねーーーーー!!!
ちょっと聞いてほんとに!!!』
肩に提げていたカバンを下ろすと、一気に体が軽くなる。
一層声も張り上げやすくなって、ここからの話はお隣さんにも聞こえてしまうだろう。
《聞きます聞きます、それで、何があったの?》
電話の向こうからする声の持ち主は、私の友達。
数少ない女友達である。
希少種、である。
『そのままキスされたんじゃん!
止めたけど止まらんじゃん!
それでそのままーーーー…』
まぶたの裏に未だ焼き付いている。
ヒロシの少し垂れた目尻。
ゴツゴツした手に頰を包まれた感触。
つい先ほどのことのようだ。
『頭の後ろ持たれてーーーー…』
長いようで短かった深いキス。
酒の勢いとはいえ、やはり悪くなかったことは覚えてる。
『〈なめて〉って…言ってきやがったんだー!』
《展開早いね。》