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Fake it

第2章 Yellow love

【智side】

オイラの腿を握ってる小さな手に力が入ってく。

そこ、弱いんだけど。
振り払うわけにもいかない。



オイラがニノの誘いを断ってばかりいた頃、申し訳ないことに、こいつを結構傷つけてたらしくて。

ある時、どうして?って泣きそうな顔で言われたから、ちょっとだけ話してしまった。

好きな人がいる、って。

名前は伏せて、でも、その人が家に来るかもしれないから、なるべく真っ直ぐ帰りたい、って言ってしまった。

あの時も、バレたら大変なことになる、アナタが傷つくから、ってニノの方が焦って。
えらい心配してくれて。

だもんで嘘もつけなくて、付き合ってるわけじゃなくて、身 体 だ け の 割り切った関係なんだよ、って。

言っちゃったのがまずかったんだよなぁ。

オイラが自分には嘘をつかないってわかってるし、優しくて、人の気持ちに敏感な奴だから。
多分、それからずっと、心配をかけ続けてるんだと思う。

プライベートなことだから本気で踏み込んでくるようなことはないけど、折に触れて、どうなってるんだ、って探りを入れられる。



「…………」

何て答えたらいいのか考えて。
でも思いつかないから、黙ったままニノの顔を見てた。

薄茶色の瞳が揺れて、ほんの一瞬だけ辛そうな顔をして。
真摯な声が真面目に言う。

「心配なんだよ
いくら大人同士、割切ってるって言っても
アナタは相手を好きなんでしょ?

最後はアナタだけが傷ついて
犠牲になるんじゃないかって…

そうなったら俺だって黙ってないから
そんなの絶対駄目だからね」

優しいニノ。
繊細で、聡いニノ。

そんな泣きそうな潤んだ目でオイラを見るな。

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