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Fake it

第2章 Yellow love

【翔side】

何だかんだとバタバタしているうちに日々は過ぎる。
澄んだ青空が高くなるのと比例するように、陽が落ちるのが早くなった。

毛布が気持ち良い季節。
朝目覚めたときに、柔らかいその肌触りを満喫しながら、俺はあの人の肌を想う。

「月日は百代の過客にして…
行かふ年も又旅人也、か…」

あれから中々部屋に行くことも出来ないでいるけど、このところ5人の仕事が多いから、あの人の顔を見る機会が多くて嬉しい。

この時期は、一日ごとにライブに向かって気持ちが高まっていくのが心地良くて、有難さを実感してる。

ずっと、こんな風に歩いて行きたい。

早足でもなく、駆け足でもなく、5人で。





単独の仕事を終えて、待ち合わせ場所の料亭へ到着すると、相手は先に来ているとのことだった。

お互いに仕事のスケジュールが詰まってるから、既にもう遅い時間だけど。

絶対に誰にも声をかけられない、プライバシーが保たれる場所で会いたいって。
珍しくおねだりされた。

きちんとした店の個室ならいいんでしょ?って確認したら、ニコニコしながら、続き部屋がある和室で、襖を開けると布団が敷いてあるような店にしてね、って。

その上、旨い日本酒も飲みたいそうだ(笑)。

インドア派で外に出たがらないのに、珍しいリクエストがあったから、なんだか嬉しくて。
俺も、ちょっとワクワクしてる。

まぁ、実際はそんなに単純な事でもないだろうことは、察しているけれども。

きっと、何か大事な話が、あるんだろう。



部屋まで案内してくれた女将さんに、料理はゆっくり運んで欲しい、と頼むと、温かいものを除いた二人分の酒肴は既に出しておいた、と返事があった。

お礼を言って、用意して来た心づけを渡す。

滑りの良い襖を開けると、見慣れた猫背が下座で胡坐をかいていた。

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