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Fake it

第3章 Violet shield 

【潤side】

リーダーが、ねぇ、ねぇ、と言いながら、右側に座ってる俺の肩を掴んで、耳元に顔を近づけてくる。

本人は小声にしてるつもりらしいけど、もうすっかり酔ってるから、一緒にいる二人にも筒抜けだよ(笑)。

「翔さんは今こっちに向かってるよ」

肩に回した手で抱き寄せるようにして、優しく言い聞かせるように返事をする。

酔っぱらったこの人が可愛いから、ってのもあるけど、翔さんが来たら絶対に抱きついたりしそうだから、目の前の二人には免疫をつけておいてもらわないといけない。

翔さんとリーダーが特別なんじゃなくて、俺達はいつもこうなんですよ、って思ってもらえるように前振りをしておかないと。

ま、役得かな(笑)。



「あ、そっか
んふっ、オイラ、さっきも訊いたよね
んふふふっ
わかった、待ってる」

嬉しそうに笑ってから、正面に座ってるムロ君と孝太郎さんにも、にこっ、と笑いかけた。

「でもぉ、今日のお酒、うまいねぇ
松ずんにお店教えてもらって良かったなぁ
オイラ、日本酒がおいしいお店なんて知らないもん

こおたろーさんも気に入ってくれたし

んふふっ
今度は5人で来よう
ねぇ、みんな?」

ふにゃふにゃ笑って、誰に向かって言ってるんだか。
可愛いったらありゃしない。

問題は、そう思うのが俺だけじゃないってことだ。



「大野君て、酔うとこんなんになるんだねぇ…」

今日、何度目かの同じセリフをムロ君が呟く。
あっけに取られて、不思議な生き物を見るような顔をしてる。

まぁ、何度か俺らの番組にも来てくれたけど、いつもお地蔵さんモードしか見てないからな。

そりゃ、びっくりするわ(笑)。

「ホント、可愛らしい人ですね
よっぽど嬉しかったんだなあ…」

続く孝太郎さんの返事も、もう親目線というか、慈しむ感じになってきちゃってて。

あ~、俺、翔さんに怒られるんじゃないかな…。
心配になって来た。

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