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Fake it

第4章 Blue dream

【智side】

お客さんが入ってない時は、小野丸みたいなボートで釣りに行って。

あそこのご主人はやる気あるのかねぇ、なんて組合の人とかに言われて(笑)。

なんか昔はテレビに出てた人らしいよ~、え~嘘でしょ~、とかさ(笑)。

むっさいオヤジのオイラを、地元の人たちも胡散臭げに見るんだ。

宝くじに当たった変人らしい、とか噂されたりすんの(笑)。

そんで、たまーにメンバーが、それぞれの家族を連れて、遊びに来てくれて。
組合の人とかが、大騒ぎするの(笑)。

「ふふふっ」

想像するだけで楽しいよ。

今日は孝太郎さんに付き合ってもらって、自分の意思を伝えに行ってきたんだ。

手ごたえはあったと思うけど。

話、まとまるといいなぁ…。





笑っちゃったら、繋いだ手に翔君が力を込めた。
見上げると、いつもみたいに微笑んでる。

しょおくん、って、名前を呼びたいけど、車の中だから我慢。

顔を見て、お互いの目が細くなって、ちょっとだけ笑いあって。

充分。

オイラはこれで充分だよ。

繋いだ手をポンポンと小さく弾ませながら、家に着くまで、ふわふわと浮いてる気持ちを楽しんでた。

窓の外を流れて行く街の灯と、同じスピードで、自分の気持ちも流れて行く。

今日は泊って行ってくれるのかな。

それとも、すぐに帰るのかな。

こんな酔っぱらってたら多分出来ないし。
オイラが寝たら、翔君は帰っちゃうんだろうなぁ…。

翔君、あったかいから、一緒に眠ると気持ち良いんだけどな…。





短い時間、眠ってしまったみたいで、マンションについたところで目が覚めた。
翔君はタクシーを待たせずに、帰してしまう。

泊って行くんだ、とわかって、ホッとした。

酔うと、どうしても恋しくなる。
何の約束もない分、触れ合っていたくなる。

「しょおくん、オイラ酔っぱらってるから
たたないよ?」

一応、悪いかな、と思って言ってみたら。
翔君は小さく笑って、ばかだなぁ、って言った。

この晩は、何もしないで、温かな腕にくるまれて眠った。

しょおくん、あいしてる

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