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Fake it

第4章 Blue dream

【翔side】

智君が淹れてくれたコーヒーを二人で啜りながら、新聞を読む振りで話かける。

「貴方、寝言いってたよ」

かなり酔っていた割に、良い酒だったのか、智君はいつもと変わりない。
ちょっとぼんやりしてて、ふわんとしてる。

猫舌だから、カップを手に持ってフーフーしてるのが、小動物みたいで可愛らしい。

「えぇ、寝言ぉ?何て?」

「組合がどう、とかって(笑)」

コーヒーを口に含んだ智君が、吹き出しそうに前のめりになる。

「なんだそれ(笑)
なんの組合?」

「ははっ、知らないよ(笑)」

「だよね(笑)」

恥ずかしそうに俯いて、綺麗な指を立てると前髪をなぞった。

俺の一番大切な人。

誰に訴えればいいのかわからないけど。
こうして二人でいる、ささやかな時間を、どうか壊さないで欲しい。

「貴方さ、何か孝太郎さんに頼みごとをした
ってきいたけど」

「あ、うん
ちょっとね…」

智君は、少しだけ口角を上げて微笑んだ後、カップに唇をつけた。

「それ…やめない?」

「……え?」

驚いて俺を見た智君を、真っ直ぐに見られなくて。
俺は新聞に視線を落とす。

「事務所からも昔から言われてきたじゃない
宗教と政治には関わるなって。
彼もそっちの人だし、何かあってからでは遅いから」

「…………政治?」

チラッと見やると、智君は何を言われているのか分からない、って顔をしてる。
俺はまた新聞に目を戻すと、反論されないように続けて言った。

「うん。
あの人のお父上も、もう結構なお年だしね。
本人にその気がなくても、どこでどう担ぎ出されるか分からないでしょ。」

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