Fake it
第5章 Red heart
【翔side】
「やりたいんだよ
むしゃくしゃするし、苛々するし…
こういうときはスッキリするのが一番でしょ?」
「翔ちゃん…」
俺を怒らせないように気を遣ってるのがハッキリわかる声で、あの人が俺を呼んで。
だけど俺は、それを無視して出掛けようとした。
何でも出来るあんたに、精一杯努力しても出来ない奴の気持ちがわかるのか。
そんな、卑屈な気持ちが押し寄せてきて、抑えられなかった。
誰よりも一番憧れてた、大好きな先輩なのに。
だからこそ、完璧にやり切って。
大野の隣は櫻井しかいない、って。
認めさせたいのに。
自分があまりにも惨めで、本当の天才であるあの人と同じ部屋に居ることが、もう耐えられなかった。
「悪いけど、あとはヨロシク
多分、朝までには帰って来ると思うから」
部屋の鍵を持って歩き出した俺を、あの人は慌てて追いかけてきた。
「待って、翔ちゃん
やればスッキリするの?」
「あ?
ああ、多分ね」
「…………」
俺の手を取ったまま、あの人は俯いて。
「悪いけど離してくれる?
邪魔だから」
キツイ口調になってしまうのを止められずに言ったら、あの人は俺の手を両手でギュッと握ってから、何かを振り切るみたいに一呼吸おいて。
「わかった
オイラが相手してやる」
そう、静かに言った。
それからゆっくりと、見せつけるみたいに片方の口角だけを上げて。
妖しく微笑んだ。
それまで見たことがなかった表情に、俺は見惚れてしまって。
「大丈夫、オイラ経験あるし
スッキリすればいいんだろ?」
返事も出来ず、あの人の綺麗な指が俺のベルトにかかるのを、呆然と見てた。
それが、あの人のFakeだってことに気づかないまま。
「やりたいんだよ
むしゃくしゃするし、苛々するし…
こういうときはスッキリするのが一番でしょ?」
「翔ちゃん…」
俺を怒らせないように気を遣ってるのがハッキリわかる声で、あの人が俺を呼んで。
だけど俺は、それを無視して出掛けようとした。
何でも出来るあんたに、精一杯努力しても出来ない奴の気持ちがわかるのか。
そんな、卑屈な気持ちが押し寄せてきて、抑えられなかった。
誰よりも一番憧れてた、大好きな先輩なのに。
だからこそ、完璧にやり切って。
大野の隣は櫻井しかいない、って。
認めさせたいのに。
自分があまりにも惨めで、本当の天才であるあの人と同じ部屋に居ることが、もう耐えられなかった。
「悪いけど、あとはヨロシク
多分、朝までには帰って来ると思うから」
部屋の鍵を持って歩き出した俺を、あの人は慌てて追いかけてきた。
「待って、翔ちゃん
やればスッキリするの?」
「あ?
ああ、多分ね」
「…………」
俺の手を取ったまま、あの人は俯いて。
「悪いけど離してくれる?
邪魔だから」
キツイ口調になってしまうのを止められずに言ったら、あの人は俺の手を両手でギュッと握ってから、何かを振り切るみたいに一呼吸おいて。
「わかった
オイラが相手してやる」
そう、静かに言った。
それからゆっくりと、見せつけるみたいに片方の口角だけを上げて。
妖しく微笑んだ。
それまで見たことがなかった表情に、俺は見惚れてしまって。
「大丈夫、オイラ経験あるし
スッキリすればいいんだろ?」
返事も出来ず、あの人の綺麗な指が俺のベルトにかかるのを、呆然と見てた。
それが、あの人のFakeだってことに気づかないまま。