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Fake it

第1章 2018 秋

【翔side】

風呂から出て居間へ向かうと、智君はソファセットのラグの上にちょこんと座って、テレビを見ながら緑の宝石を口に運んでた。

「あっ!食ってるっ」

シャインマスカット。

「んふふ、これ、うまっ」

そりゃあ、美味いでしょうよ。

俺を振り返ると、極上の笑みでふにゃっと笑った。

うん。
この顔が見たかったんだ。

地位も名誉も、金も女も欲しがらない貴方。

この人を喜ばせるのは、俺の特権。
誰にも譲るつもりはない。

また一粒、いそいそと手を伸ばして、房から丁寧にちぎり取る。

美しい指でつまんで、口元へ。
唇 が 開いて、大粒のそれが迎え入れられるのを、スローモーションで見るみたいに堪能する。
この人は自分がどれだけ 官 能 的 な 存在なのか、ちっともわかってない。

もぐもぐと咀嚼しながら、立ったままの俺を振り仰いで、またふにゃんと笑った。

動く頬と、すぼめた 唇 の 間に滲む果汁。
今にも滴り落ちそうな、その甘い雫。

可愛らしいピンクの 舌 が チラッと覗いて、唇 を 舐 め た。

「しょおくんも、んっく、食べなよ
オイラぜんぶ、食っちゃうぞ?」

いただきますとも。

俺は葡萄が乗ったガラステーブルを足でぞんざいに移動させてから、貴方の上に覆いかぶさっていく。

頭を支えながら、愛しい宝物をそっと押し倒した。













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