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Fake it

第10章 LOVE

【智side】

たくさん話して声も枯れてきた頃。

帰ろうとして時計を見ると、もうとっくに真夜中になってて。

結局その晩は泊めてもらった。

ソファーで半分裸にされてたオイラが帰るって言っても、翔君はだめ、ってきかないし。

あちこちキスされて、撫でられて。

愛してるって何度も言われているうちに、もういいやと思った(笑)。

明日のこともあるし、人の家って落ち着かないから、ホントはいったん帰って、ちょっと、いろいろクールダウンしたかったんだけどね。

だって、全部夢かもしれないし。

けど、頭で考えることなんか、どうせいつも心配と不安しか連れて来ない。
結局は、五感で感じることの方が、大体いつも正しいんだ。

シャワーを借りた時、一緒に入る、って騒ぐ翔君と攻防戦があって、ようやく一人で浴びたんだけど。

浴室の棚に並ぶ何種類ものボディーソープとかシャンプーをみて、オイラは拍子抜けして、呆然と口を開けてしまった。

洗面所とか、浴室とか、キッチンも。

生活感が出る場所は、もしかしたら彼女サンの痕跡があるかもしれない、って。

そんなのを気にしてチェックしてしまうだろう自分も嫌だったし。

翔君の部屋に行くのはずっと避けてきたのにさ。

実際に来てみたら、痕跡どころか、なんでこんなに石鹸ばっかり一杯あんの?って呆れる程の種類の多さで(笑)。

いつも翔君を見てればわかるはずのことなんだけど、そう言えば翔君本人が女子力が高い人なんだった、って気がついた。

フックに掛けられた、何本もあるボディーブラシとか、ゴシゴシタオルを見て、オイラは自分の情けない不安とか、その斜め上を行く翔君の個性を思って笑ってしまった。

部屋を見れば、その人の人となりがわかる、って言うけど。

見もしないで悪い想像ばかりしてたんだな、と思った。

趣味のものが並んでるオイラの部屋も結構物が多いけど、翔君の部屋もいろんなものがあって。

ところどころに何か開封されてないふうの電化製品の箱があったり、本棚から溢れたDVDや書籍がタワーになってたり。

オイラの知らない翔君が、この部屋にはたくさん詰まってる。

明日、仕事に行く前にゆっくり見せてもらおうと思う。

まだまだ知らないことが一杯あって、新しく始められる。





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