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夜の影

第15章 孤高の人

【智side】

眩暈が酷い。

躰 を縦にしても横にしても、世界がぐるぐると回ってるみたいだ。

とてもじゃないが、目を開けていられない。

肋骨の内側から誰かが拳で叩いてるみたいに、動悸がしてる。

はっ、はっ、って自分の早い呼吸が聞こえて。

変な汗が噴き出してきてて、気持ち悪い。



抱 き 上げられてどこかに運ばれてる間に、猛烈な吐き気がおそってきて。

途中で吐いた気がするけど、朦朧としてて、よく憶えてない。

苦しい、苦しいと思っているうちに、お湯につけられて、多分 躰 を洗われた。

次にわかったのは冷たいシーツの感触で、布団をかけられて寝かされるところだった。

地面が揺れてる感じが大分、楽になってる。



「う…ん…」


気持ち悪いのに、躰 の 中 心 だけは ジン ジン してて熱い。

イ き た い のに、イ き たくないような感覚が続いてた。

快いものではない。

イライラする。



「んん…」



口の中に水が入ってきた。

苦しくて飲み込めないのがわかってるみたいに、ゆっくり少しずつ流し込まれる。



「んはぁっ」



もういらない、って首を振るけど、続けて飲まされた。

口移しの 唇 の 感触で、アイツだとわかる。



「あの 薬 は 効くのも早いが抜けるのも早い
もう少し大人しくしてろ」



声がして、冷たい手が額に触れた。

ああ、仕事が終わったんだ、と思った。










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