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夜の影

第15章 孤高の人

【智side】

ゆっくりと上下に動く冷たい手の、握った力加減が心地良くて。

キツくもないし、緩くもない。



「う、ん…」



何だか分からないけど、涙が出るのはどうしてなのか。

悲しいのか、辛いのか、自分でもよく分からない。

煽られることもなく、ただ慰められてる。

薬のせいで感覚がおかしくなってるから、多分、イ け な い。

無理に イ か せ ようとしないでくれるのは有難かった。



「あぁ…」



きもちぃな…。

ずっと触っててくれればいいのに。

疲れ切ってて、声を出すのも怠くて。

声にならない溜息みたいなのを吐き出しながら、安心して手の動きに身を任せてた。

コイツと二人きりでいると、俺は18歳のガキに戻ってしまう。

あの頃は、まだ女と し た こともなかった。

躰 を 繋 げ た のはコイツが最初で。



「ふふっ…」



ガチガチに緊張してた俺は、ベ ッ ド に入ってからも震えがなかなか止まらなかった。

あの時も、コイツはこんな風に腕枕してくれて。

俺の 躰 から緊張が抜けるまで、何度も 口 づ け しながら背中を撫でてた。



「…どうした?」



あれから俺は沢山の 男 と や っ て きたけど。

男 の 下 に居る時は、誰と や っ て も、アンタがくれる以上の 快 感 は無かったよ。



「き も ち ぃ…」



言ったら、笑った気配がして、目蓋に 唇 が ち ゅ っ と 当たる。

どうせなら、ちゃんと キ ス してくれよ。



「あぁ…
なぁ…ちゃんと 抱 い て よ…」



動いてた手が止まった。







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