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夜の影

第16章 明日の記憶

【翔side】

サトシに会いたいと想う一方で、ここはどこか幸運にも与えられたシェルターみたいなものだ、ってことも、本当は俺にだってわかってて。

このままではいられないし、いずれ現実に戻らなくてはならないことも理解してた。



ようやく機内モードを解除したスマホで、母方の祖母に連絡を入れてみると、意外にも弟妹は元気にしているらしくて。

向こうでの生活に馴染んでいる様子を教えられて、ホッとしたというか、気が抜けたというか。

勿論、まだ小さな弟は、両親のことを思って泣き出すこともあるらしいけど。

祖父母もまだ若いし、妹がこれまでよりずっとしっかり振るまってるらしい。

地元の進学校へ転入したから心配していたけど、受験勉強をしながら東京に必ず戻る、って、踏ん張ってるみたいで。

俺は現在の自分が家に戻れないでいることや、大学も休学したことを、とうとう口に出せなかった。

来年の4月になったら、家から大学に通えるよ、って。

そう妹に言って欲しいと祖母に頼んだ。





『ショウ』

『自分から堕ちることはないんだ』

『やり直せるから
こだわってるものを手放しな』

『お前が大切に思ってる家族とか恋人とか?
お前が辛い思いをして喜ぶと思うか?』





今の俺が一番にやらなくてはならないこと、ってなんだろう。

サトシが居なくなってから、ずっと考えてる。










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