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夜の影

第17章 Daylight

【智side】

発見されたとき、カズは大量の睡眠剤を飲んでて。

恐らくアイツと共に逝こうとしたんだろう。

あの時の俺は全くの役立たずで。

足元に落ちてた薬のシートにマツオカさんが気づいたから良かったけど、処置が遅れてたら取り返しがつかなかったかもしれない。

目を覚ました時のカズは、胃を洗浄したせいでかなり衰弱してたけど、意識はしっかりしてて。

途切れ途切れに、自分たちが屋敷を出た時には、まだ火が上がってなかったことを告げた。

従兄のニノミヤ氏が、手にポリタンクらしき白い物を持って蔵の方へ歩いて行くのを見た、と。


「あいつ、やっぱり、やったんだ」


そう言って、嘲笑うように口元を歪めた。

ちょっと、ゾッとするような表情だった。

後に病院まで来た刑事から聞いた話だと、二宮家の家政婦の証言もあったそうで、屋敷に火を放ったのは、俺に薬を盛ったあの男で間違いないらしい。

しっかり生き残った本人は、否定してるそうだけど。

順当にいけば、やがては父親を経て自分のものになる筈だった財産が奪われる、とわかって、心 神 喪 失 状態で、ってことになるんだろうな…。

皮肉なもんだ。

心 神 喪 失 状態、と言うなら、むしろカズの方がそうだった。



アイツは、事が済んだ後、疲れた、と言って。

運転はカズがしたという。

少し流そうか、と言われて、横浜港方面へ向かって。

アイツの指示した場所に車を停めた後、喉が渇いた、って。

それで。

カズが車を降りて自販機まで行って。

戻ってきたときには、もう息をしていなかったらしい。

端正な顔は、最期までとても美しくて。

微笑んでるみたいに見えた、って。



そこまで説明して。

次に目覚めた時には、カズは子供になってた。









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