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夜の影

第17章 Daylight

【智side】

躰が回復してからも、俺が一緒に居ない時のカズは、ぼーっと固まってるか、布団をかぶって出て来ないかの状態が続いてて。

まともに会話ができるようになるまで、しばらくかかった。

アイツの話は一言もしない。

実家に関することにも全くの無反応で、その話題が出るとフリーズするし。

父親の秘書が来た時にも頑として目を合わせようとしなくて、徹底的に無視してた。



専門の施設に入院させる、という父親の意向を、マツオカさんとコクブンさんが断固として拒否って。

実際問題、俺以外の人間とはほとんど会話もしないから、どこに行っても同じ状態が続く可能性がある、って医者が言った。

それで、退院する際には俺と同居するってことで、マツオカさんがカズの父親へ押し通し、先方も了承したらしい。

俺と二人で事務所で暮らす、って案もあったんだけど、マツオカさんはそれにも反対で。

頼むから目の届くところに居てくれ、って真剣に言われて、結局マツオカさんの部屋に二人で転がり込むことになった。

事務所にはショウがまだ居たし。

カズには多分刺激が強すぎる場所だ。





「お店に着いたらゲームしてもいいの?」


カズが心配そうに言った。


「いいよ
松兄がゲーム ソフト沢山用意しておく、
って言ってただろ
マ リ オやろうぜ」

「…オレねぇ、マ リ オ、とくいだよ」


握ってる手が、またぶんぶんと揺れた。







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