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夜の影

第17章 Daylight

【智side】

今日はこれから、会社で新しくオープンする店の下見?に行くことになってる。

プレオープンっての?

マツオカさんから、必ず来るように、って言われて、しょうがなく、なんだけど。



カズが退院してから3日間、二人でずっとマンションに籠ってたら、それじゃ駄目だってマツオカさんに怒られて。

一日一回は、どんな用事でもいいから外に出るように、って厳命された。

お前とカズはもう昼の世界に戻るんだから、昼夜逆転してるような生活になったら駄目だって。

ちゃんと太陽の下を歩け、って。



あの人、ホント、アキラをやってたくせに、常識人と言うか、まともな人なんだ。

妙に昔気質と言うか、社長に義理立てしてるらしくて。

俺達に対して保護者の気持ちになってるらしい。

社長になったばかりでマツオカさんだって忙しいはずなんだけど。



仕事中にひょっこり帰宅して飯を作ってくれたり。

カズがマツオカさんに中々慣れないから、一生懸命打ち解けてもらおうとしてゲーム ソフトを買ってきたり。

カズが早く自分に慣れるように、「松兄」って呼べ、って(笑)。

最初の頃、マツオカさんが帰宅しても、カズは俺の背中に隠れて顔も見せなかったのに。

それでも根気強く何度も話しかけてさ。

この間、ようやくカズが「おかえりなさい」って言った時には、目を真っ赤にして喜んでた。

ホントにあの人は面倒見が良くて、頼りになる兄貴、って感じ。

まぁ、ちょっと指導も多いけど(笑)。

喋ってるとウチのじーちゃんを思い出すことが多かった。





「お店に松兄もいる?」

「居るよ
カズが来るから、必ず行くって言ってた」

「人、いっぱいいるのかなぁ…」


カズの足がまた止まる。

大人が歩いたら10分とかからない距離なのに、何度も立ち止まってるから倍はかかりそうだ。


「招待されてるのは少しだって言ってたよ
ハンモックがあるんだって
俺、少し昼寝しようかな」

「えぇ~、サト兄、マ リ オは?」

「マ リ オが終わったら寝る
それなら、いいだろ?
きっと店の中は涼しいぞ」

「うん」


カズの手を引いて、また歩き出した。





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