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夜の影

第17章 Daylight

【翔side】

家の中は、ようやく、両親が生きていた頃の状態に近いところまで、片づけられたと思う。

ジョウシマさんと事務所で話した夜から間もなくして、家の鍵が戻ってきた。

正確に言うと、差 押 え されてないことが証明されて、でも鍵がないから、業者に頼んで取り換えたんだけど。



家の中は荒れに荒れてて、正に泥棒が入った後、って感じになってて。

土足で入ったらしい足跡がたくさん残ってたし、弁当を食べた跡らしいゴミも山になってた。

勝手に使われてた様子の浴室や寝室。

家探しされた父親の書斎。

ジョウシマさんの勧めで被 害 届 を出したから、警 察 の取り調べもあって、指 紋 採 取 の粉の跡とかも更に追加されて。

それらを毎日一つ一つ、時間をかけて掃除していった。



最初の頃は、腹が立って、悔しくて、悲しくて、泣きながら片づけてたんだけど。

目に見えてキレイになっていく様子が、何だろ、気持ちを癒してくれたって言うか。

学校とか就職とか、弟妹のこと、サトシのこと、いろいろと頭と心で思い浮かべながら、手だけは止めないように動かして作業してて。

そうこうしているうちに、どんどんキレイに整っていく現実が俺を支えてくれたような気がする。

グルグルと詮無いことを考えることが無くなって行った。



俺が今やらなくてはならないことを、一つずつ冷静に考えて。

まず、大学に戻ることにした。

それから、自分に何が出来るのか、と、何をしたいのか、も、なるべく感情を脇に除けるようにして考えて。

弁護士になりたいと思った。

今居る学部とは畑違いだから、また改めて 法 科 に入り直すことにはなるけど。

両親が遺してくれたお金も、殆ど無事だったことが分かったし。

奨 学 金 制 度 も、利用できそうなことが分かった。

弟妹の学費を優先するのは勿論だけど、俺はまず自分が大学を卒業して、それから法律を勉強することに決めた。

来週、母の田舎へ行って、祖父母とも話し合うことになっている。








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