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夜の影

第17章 Daylight

【智side】

発売されたばかりらしいソフトを見つけたカズが、早速ヘッドホンをかけてゲームをやり始める。

二人でやるタイプのゲームではないみたいで、目をキラキラさせながら、サト兄、マ リ オ は後でやろうね、って。

ちゃっかりしてら(笑)。

俺はカズの隣に座って、観葉植物の間から、やってくる客たちをボーっと眺めた。



若い男ばかりで、イケメン揃い。

アイツの葬儀で見かけた顔ばかりだった。



つまり、かつてアキラだった、または今もアキラをやってる連中だ。

そうか、と、分からないなりに合点が行く。

何か、そっちの仕事に関連した目的があってオープンした店なんだろう。

道理で、何の店かわかりにくくしてる筈だ。

税 金 対策とかかもな…。

ぼんやり考えながら、ふと、客の中に居る筈のない顔を見つけた。



ショウ。



相変わらずの大きな目。

ちょっと唇を結び加減にして、緊張しているように見える。

黒いシャツに黒いネクタイ、ブラックジーンズを履いて足元は革靴だ。

姿勢良く立つ姿は、仕込みの頃よりも大人っぽく感じた。



どうしてここに?

ショウは家に戻った筈だ。

アキラの集まりに来る理由がない。



翔は、まるで誰かを探しているように、他の客の顔を一人一人遠くから見つめてた。

俺は自分の気配を消すことに専念する。

気付かれてはいけない。

ショウの人生に、もう、俺は関係ないんだから。

あそこであったことは、ショウにとっては一時迷い込んだ非日常の出来事だ。

俺とショウでは、属する世界が違う。



動揺を鎮めようと、緑の隙間から窓の外を眺めていたら、視線に気づいた。

ヘッドホンをつけたままのカズが、薄茶色の瞳で、俺のことをじっと見ていた。


「サト兄、おなか痛い?」

「ん~?そんなことないよ」


笑いかけても、カズはじーっと俺の顔を見たまま視線を外さない。

ピアノの演奏が止まる。

マイクのスイッチを入れた音がして、マツオカさんが挨拶する声が聞こえてきた。







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