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夜の影

第18章 Song for me

【智side】

ばかショウ。

お前、自分が何を言ってるかわかってないだろう。



「サトシ」



ああ、悲しみを含んで来た。

せっかく喋ってる声が聞けたのに。

そんな声を出されたら、辛い。



諦めさせようと思って、NOの代わりに、首を大きく左右に振った。

仕込みをやめない、って、かたくなに喋らなかったショウ。

あの一途さと同じ強さで、俺はこいつを拒めるのか?



拒むんだ。



もう一度、首を横に振る。



ショウが鼻をすする音がして、立ち上がろうとしたその時。



「ま、待って!」



カズが言って、突然動いた。

今の俺には、カズをかばってやる余裕はない。

岩のように動かないでいるだけ。



「これっ」



鞄を漁っていたカズが、ショウに何かを差し出す気配がする。

あっ。

スケッチブックか!?



「ばか、やめろっ」



止めようとして慌てて立ち上がると、あろうことか足が痺れててバランスを崩してしまう。

よろめいた俺を、ショウががっちりと抱き留めた。



「…会いたかった」



俺の背中に回った腕に力が入る。

意地になって顔を上げないでいると、ショウは俺の耳元で、息を大きく吸い込み、はぁ~と吐き出す。



「サトシ、会いたかった」



後ろ頭を抱えられて。

俺はこいつが話す声を初めて耳元で聞いた。

背筋に震えが走る。

また、ショウが大きく深呼吸した。








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