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夜の影

第4章 イン・ザ・ルーム

【翔side】

「ふっ、オイラ、烏の行水なんだ」

オイラ。

Tシャツに 下 着 だけの姿で、髪をタオルでガシガシやりながら入ってくると、俺の前に立つ。

「くくっ、お前、素直だなぁ」

は?

訝しく思って見上げると、サトシの手が伸びて来て俺の顎を指で持ち上げる。

「考えてることが丸わかりだよ
育ちがいい奴って感じ
今まで生きて来て
親の顔色を窺ったり
周りに何を考えてるか知られないように
自分を偽る必要なんてなかっただろ?」

一瞬、皮肉を言われてるのかと思ったが、嫌味な感じの話し方ではなかった。
目が、ちょっと笑ってるように見える。

親指が、俺の 下 唇 をゆっくりなぞった。

そのまま爪が 口 の中に入ってくる。

さっきの キ ス を思い出して、爪に 歯 を立ててやった。

好きなようにばかり、させるもんか。




「ふふっ、いいね、その顔
お前、きっとアメリカあたりの 大 富 豪 にウケるよ」

さっきは向いてない、って言ったくせに。
いや、向いてる、って言われても面白くないけど。

俺は悔し紛れにサトシを睨みつける。

「ああいう連中は、美人で生意気で
頭が良い東洋人がお好みなのさ
俺みたいなのはあんまりウケない」

俺みたいなの、って?

俺の疑問は伝わってると思うけど。
サトシは答えずに、フンと鼻を鳴らしただけだった。

「舐 め て」

えっ?

「指だよ
舐 め て み な」

…………。

歯を立てていた 指 を一旦離して、咥 え 直そうとしたら。

「んっ」

グッと根元まで入れられた。








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