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夜の影

第21章 おまけ 彼方へ

【智side】

ベッドにしたソファに二人で横たわると、翔が 躰 を 反転させて、俺の顔を見る。

腕枕をしてる体勢になったから、そのまま 抱 き 寄せて髪を撫でた。


「…………」


上気した頬。

潤んだ瞳。

ゆっくりと翔の 唇 が 近づいて。

薄く開く。





さっき店で、ギリギリで止められたところまで。

お互いの息の熱さがわかるところまで。

近づくまでの、もどかしい時間。

唇 と 唇 の 間の、その密度。



「…っ……」



翔が俺に、かすかな感触で一瞬だけ触れて、すぐに離れた。

俺の方から追いかけて短く 吸 う。

ちゅっ、って音がする。

その音に後押しされるみたいに、二人、無言のまま、何度も繰り返した。




ちゅっ。


…ちゅっ。




息を吐く時の、声にならない甘い 喘 ぎ。

何度も。

何度も。



「…はぁっ…」



翔が、こらえ切れないみたいに、吐 息 を 漏らすから。



「っ…翔…」



たまらなくて、背中ごと、強く抱きしめる。
脚も使って、躰 を 引き寄せた。




もう会えないと思ってた。

手に入る筈もないと思ってた。

我慢出来なくて 舌 を 滑り込ませる。




「んっ…ぁ…」



翔の背中に回した手を、シャツの中に入れた。

しっとり湿った肌。

俺の 舌 に 添わせるように、そっと絡んでくる翔の 舌。

遠慮がちに。

そっと。



がっつかないように自分を抑えながら、俺は猫の腹を撫でてるような気持になる。

こいつは、どうして、こんなふうに自分を差し出せるんだろう。

怖くないんだろうか。

経験が浅いから知らないだけなのかもしれないけど。

投げやりに、もうどうにでもして、って言うんじゃなくて。

丁寧にそっと差し出してくる。

貴方の望むようにしていいよ、って、包み込むみたいに。

何の打算もなく、ただ、明け渡してくる。



愛されてる、ってこういう感じなのかなぁ…。







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