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夜の影

第21章 おまけ 彼方へ

【智side】

「ん、あ、ぁ…」

舌 を 吸 っ て、口 づ け を 深くしながら、背中を撫でていた手を 腰 から下に移動させた。

尾てい骨のところから指を差し入れると、汗で湿った翔の 躰 が、ビクッと大きく震える。


あ。

もしかしたら。


俺は前回、歯止めがきかなくて無理をさせたことを思い出す。

まだ、怖いかもしれない。

絡めてた脚をどかして、そっと 唇 を離す。

唾 液 が細く糸を引いた。


「翔…怖い?」


忍ばせた 指 は そのままで。
鼻の頭にチョンと 口 づ け て、枕にしてた腕で頭を撫でた。


「…………」


考えるような間があって、翔の頭が左右に小さく揺れる。
顔が見えないから、豊かな表情もわからない。

額にちゅっ、と 口 づ け る。


「…翔?思ってること、教えて?」

「…………」

「翔…?
俺はしなくてもいいから」


お前が俺に心をくれたから、もう十分だよ、って。
そう言う意味だったんだけど。


「えっ!?」


翔が酷く驚いた声を出したから、こっちがびっくりした。


「しないの?」


俺の顔を見ようとして、翔が 躰 を 離し加減にする。

今にも泣きそうに潤んだ瞳。
鼻の先が赤くなってる。


「ぐふっ」


あんまり可愛いから、吹き出しそうになって。
我慢したら変な声が出た(笑)。

俺たちはまだ始まったばかりなんだから。
言葉を惜しんだらダメだな。

俺は相手を脅かさないように、細心の注意を払って自分の 欲から気を逸らす。


「この前、かなり無理させたし…
お前、まだ慣れてないだろ?
怖い気持ちがあるなら正直に言いな?
俺はしなくてもいいから」

「…怖くないよ、智だもん…」

「ほんとは?」

「…ホントだよ
なんか俺
自分がこんなふうになると思ってなくて…」

「うん」

「あの、なんだか、夢中になって…
貴方に触られてると
いろいろ、気 持 ち 良 く て
恥ずかしいし…
俺、自分がわかんなくなるの…」

「…うん」


言いながら、翔の視線がどんどん下がって。


「俺、あんまり経験ないし
わかんないから
だから
智は物足りないかもしれないけど…
俺、貴方にどうしてあげればいい?
わかんない
ごめん…」


予想外の返事に、俺はまたしても、心の底から、本当に、びっくりした。





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