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夜の影

第21章 おまけ 彼方へ

【智side】

スースーと聞こえ始めた寝息を確認してから、オイラは立ち上がって、毛布を取りに行った。

歩きながら、不意に涙が出て来る。


「あれ?(笑)」


なんだ、これ。


「ふふっ」


気持ちが通じる、ってこういうこと?

新しく取り出したTシャツを被って、タオルで髪を拭きながら。

顔が自然に笑ってしまうのに。

やっぱり、何だか泣けてくる。





ああ、俺。

生きてて良かったんだなぁ…。





「ふふっ」

タオルを顔に押し当てて。
止まらなくなりそうな嗚咽を噛み殺す。

強く押さえた目蓋の裏に、アイツの顔が浮かんでくる。


「…っ…」


はあ~、っと大きく息を吐いて、何気なく見やった窓の外は、冗談みたいな青い空。

後から、後から涙が出てきて。

俺は、今日のことを絶対に忘れないと思った。

この先、何があっても。
あんまり幸せで泣き笑いしてる、今日の記憶があれば。

俺は、きっと大丈夫だ。

生きていける。

な?

そうだろう?





結局、昼寝した時間は30分程度だったけど。

目覚めたショウは抜けてた魂が戻って来たようで、しっかりした顔をしてた。

二人、連絡先を交換して、この日は、マンションの前で、別れた。


「店に戻ってきたらいいのに」

「うん、でも、
智と一緒にいるとくっつきたくなるし(笑)
二宮君が待ってるでしょ」


翔が真っ直ぐに俺を見て、笑顔を見せる。


「ん…。
心配だから、家に着いたら必ずメールして」

「うん、わかった」

「ナンパされても断れよ」

「だはっ、されないよ」


ばーか、お前、今の自分の色気を分かってないな?
そんな、ふわふわ歩いてたら…。







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