夜の影
第23章 half brother
【和也side】
「大野さん! 待って、どこに行くの!?」
振り向きもしないでスタスタと歩いて行く後姿に、僕は焦って思わず彼の腕を掴んだ。
「ねぇ、ってば! 待ってよ」
やっと止まってくれた大野さんは、僕の手を乱暴に振り払って、吐き捨てるように言った。
「お前、ふざけんなよ! 俺は帰る!」
また早足に歩き始める。
どうしよう、怒らせたんだ。
「待って! お願いだから話を聴いて!」
叫びながら走り出した時、向かいから歩いて来た人とすれ違いざまに体がぶつかった。
「あっ、すいませんっ」
結構な勢いでぶつかったのは解っていたけれど、僕は大野さんを追おうとした。
その肩を背後から強い力で掴まれる。
驚いて見やったら、ぶつかった相手は体の大きな若い男だった。
「……スイマセンじゃねーよ」
「あっ! ごめんなさい、僕急いでてっ」
大野さんの方を見たまま言ったら、顎をグイッと掴まれる。
ギョッとして男を見上げた。
チャラいと言うより、むしろヤクザの下っ端みたいな感じで。古臭いリーゼントみたいな髪型をしてる。
「人にぶつかっておいて、その態度はねーだろう。ちゃんと謝れよ」
「ごっ、ごめんなさい」
「痛かった」
「え?」
「痛かった、つってんだよ。もっとちゃんと謝んな」
怪我をしたようには見えない。
ってことはホンモノのそっち系の人か?
くっそ、なんでこんな時に。
制服でどこの学校かバレてるとまずい。治療費をたかられる。下手に謝ると、こっちが悪いのを認めたことにされてしまう。
弁護士に連絡を。
頭の中で考えている時に、背中から大野さんの声がした。
「弟が何かしましたか?」
「何だおめぇ、こいつの兄貴か?
ぶつかって来たんだよ、俺に。口先だけでテキトーに謝りやがって。
おれはそういう奴が一番嫌いなんだよ。
人間ごめんなさいと有難うを言えない奴は終わってんだ。
近頃のガキはホントによ」
「大野さん! 待って、どこに行くの!?」
振り向きもしないでスタスタと歩いて行く後姿に、僕は焦って思わず彼の腕を掴んだ。
「ねぇ、ってば! 待ってよ」
やっと止まってくれた大野さんは、僕の手を乱暴に振り払って、吐き捨てるように言った。
「お前、ふざけんなよ! 俺は帰る!」
また早足に歩き始める。
どうしよう、怒らせたんだ。
「待って! お願いだから話を聴いて!」
叫びながら走り出した時、向かいから歩いて来た人とすれ違いざまに体がぶつかった。
「あっ、すいませんっ」
結構な勢いでぶつかったのは解っていたけれど、僕は大野さんを追おうとした。
その肩を背後から強い力で掴まれる。
驚いて見やったら、ぶつかった相手は体の大きな若い男だった。
「……スイマセンじゃねーよ」
「あっ! ごめんなさい、僕急いでてっ」
大野さんの方を見たまま言ったら、顎をグイッと掴まれる。
ギョッとして男を見上げた。
チャラいと言うより、むしろヤクザの下っ端みたいな感じで。古臭いリーゼントみたいな髪型をしてる。
「人にぶつかっておいて、その態度はねーだろう。ちゃんと謝れよ」
「ごっ、ごめんなさい」
「痛かった」
「え?」
「痛かった、つってんだよ。もっとちゃんと謝んな」
怪我をしたようには見えない。
ってことはホンモノのそっち系の人か?
くっそ、なんでこんな時に。
制服でどこの学校かバレてるとまずい。治療費をたかられる。下手に謝ると、こっちが悪いのを認めたことにされてしまう。
弁護士に連絡を。
頭の中で考えている時に、背中から大野さんの声がした。
「弟が何かしましたか?」
「何だおめぇ、こいつの兄貴か?
ぶつかって来たんだよ、俺に。口先だけでテキトーに謝りやがって。
おれはそういう奴が一番嫌いなんだよ。
人間ごめんなさいと有難うを言えない奴は終わってんだ。
近頃のガキはホントによ」