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夜の影

第4章 イン・ザ・ルーム

【智side】

生意気をしてる時の顔もいいが、俯いたり、目を閉じたときの睫毛がキレイだ。

あー、俺、コイツの顔、好みなんだわ。

俺はショウと入れ替えたグラスに残った氷を口に入れると、ガリゴリと噛む。
口の中がスッキリして気持ちいい。

「家族とか、恋人のためなんだろ?どうせ」

訊くとパッと顔を上げて、俺を見た。

唇 を噛んで。
瞳が何かを探すみたいに、揺れ始める。

「そんな奴ばっかりだよ
ここに来るのは」

俺はまた氷を口に入れてガリゴリと噛んだ。





ほら、こんな顔を見るとほだされる。
俺とこいつは全く違うっていうのに。

かわいそうに、と思ってしまう。

ヒマワリみたいに太陽に向かって顔を上げて、光の中を歩く筈だった奴が。
大人たちの汚い思惑ではじき出されて。

それでもショウは、自分に出来ることを探したんだろう。
あらがうだけの根性があるってことだ。

俺は手に持っていた空のグラスをチェストの上のトレーに戻す。





「じゃぁさ、大切な人のこと、諦めない
って思ってたらいい
そしたら迷わないから」

ショウに向かって腕を伸ばし、肩の上に乗せた。

ふっ、なで肩。

上半身を近づけて、ショウの首の後ろで、両手の指を組み合わせる。

「自分を見失ったら戻れなくなるぞ
わかったか?」

笑いかけてやると、ショウは噛んでいた 唇 を吸い込むようにしたまま、俺の目をしっかり見て頷いた。





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