夜の影
第25章 Child missing
【智side】
「昨日のことはカズから聞いた。
バイト先に押し掛けたそうだな。
それに、チンピラに絡まれて助けてもらったと。
迷惑だっただろう」
疑問形ではなく、わかっている、とでも言うような肯定の話し方だった。
オイラはソファテーブルに肘をついて、淹れてもらったコーヒーを冷ましながら聴いていた。マイケルはもう聴こえない。
ラグの上に正座してるのを見て、ヒガシヤマさんの目がまた少しだけ、優しく歪んだ。
「足を崩したらどうだ?」
「あ、ウチ、炬燵だから……」
そうか、と静かに言って続ける。
「大野君、お母さんのこと、いろいろ大変だっただろう。お悔やみを申し上げる。
その上で敢えて言うが、君は二宮家には関わらない方が良い。
昨日のことは忘れて欲しい」
目に浮かんでた優しい感じがなくなった。
「それとも君は二宮の名前が欲しいか」
言われた言葉に驚いて、オイラは慌てて首を振った。ヒガシヤマさんが値踏みするみたいにオイラを見てる。
「オイラ、じゃない、僕は大野智です。
今までも、この先もずっと変わりません」
信用してもらいたくて、言わなくても良いことまで言ってしまう。
「正直、二宮君の話には腹が立ったし……」
自分は要らなくて捨てようとしてるのに、それをやるから、って無理を言われてもなぁ。
「かーちゃんが保険とかちゃんとしてたから、別に金には困ってないです。
ちょっと、ウチ、ばーちゃんの介護とかがあって。
オイラも手伝ってたから就職活動は出来なかったけど……今更、他所の家の子供になる気はありません」
上手く伝わったか分からないけど、オイラが言い終わるまでヒガシヤマさんは黙って聴いてくれた。
「……そうか、いろいろ悪かった」
そう言ってオイラの頬に触れた手が冷たくて。
でも、気にしてくれてるのが嬉しい気がして。自分の気持ちがよく分からない。
ただ、これで終わり、って雰囲気になったのを残念に思った。
オイラがここを出たら、それで全部終わってしまうんだ。
初めて会った弟との縁もアッサリ切れてしまうし……この人にも、もう会えないんだな、と思った。
「昨日のことはカズから聞いた。
バイト先に押し掛けたそうだな。
それに、チンピラに絡まれて助けてもらったと。
迷惑だっただろう」
疑問形ではなく、わかっている、とでも言うような肯定の話し方だった。
オイラはソファテーブルに肘をついて、淹れてもらったコーヒーを冷ましながら聴いていた。マイケルはもう聴こえない。
ラグの上に正座してるのを見て、ヒガシヤマさんの目がまた少しだけ、優しく歪んだ。
「足を崩したらどうだ?」
「あ、ウチ、炬燵だから……」
そうか、と静かに言って続ける。
「大野君、お母さんのこと、いろいろ大変だっただろう。お悔やみを申し上げる。
その上で敢えて言うが、君は二宮家には関わらない方が良い。
昨日のことは忘れて欲しい」
目に浮かんでた優しい感じがなくなった。
「それとも君は二宮の名前が欲しいか」
言われた言葉に驚いて、オイラは慌てて首を振った。ヒガシヤマさんが値踏みするみたいにオイラを見てる。
「オイラ、じゃない、僕は大野智です。
今までも、この先もずっと変わりません」
信用してもらいたくて、言わなくても良いことまで言ってしまう。
「正直、二宮君の話には腹が立ったし……」
自分は要らなくて捨てようとしてるのに、それをやるから、って無理を言われてもなぁ。
「かーちゃんが保険とかちゃんとしてたから、別に金には困ってないです。
ちょっと、ウチ、ばーちゃんの介護とかがあって。
オイラも手伝ってたから就職活動は出来なかったけど……今更、他所の家の子供になる気はありません」
上手く伝わったか分からないけど、オイラが言い終わるまでヒガシヤマさんは黙って聴いてくれた。
「……そうか、いろいろ悪かった」
そう言ってオイラの頬に触れた手が冷たくて。
でも、気にしてくれてるのが嬉しい気がして。自分の気持ちがよく分からない。
ただ、これで終わり、って雰囲気になったのを残念に思った。
オイラがここを出たら、それで全部終わってしまうんだ。
初めて会った弟との縁もアッサリ切れてしまうし……この人にも、もう会えないんだな、と思った。