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夜の影

第25章 Child missing

【智side】

その頃オイラは小学校の一年生になったばかりで、入学と同時にかーちゃんがパートに出るようになったことが淋しくて仕方なかった。

当のかーちゃんは、やっと働ける、って喜んでたから言い出せなくて。

後から聞いたらその頃に二宮家の家令さんに会ったそうで、あっちに跡取りが居ることを知ったらしい。

オイラを取られると思って隠れるように暮らしていたけど、やっと安心した、と言っていた。

オイラの方はそんなこと知らないし、大好きだった幼稚園から小学校に入って、まぁ多分、今思うと、子供心にも環境の変化が不安だったんだろうな。

学校は嫌じゃなかったけど、終わると少しでも早くかーちゃんに会いたくてさ。

一学期の間くらい、同じ市内にあるかーちゃんの職場まで、学校帰りにランドセルを背負ったまま迎えに行っていたんだ。

それでケン君と知り合った。

かーちゃんが勤める会社の隣には小さな公園があって。
オイラはいつもそこでかーちゃんの仕事が終わるのを待ってた。

ケン君もよく一人で来てて、何のきっかけで話したのかは忘れたけど、年が近かったからすぐに仲良くなって。

話を聞いたら彼は隣の小学校の子で、お兄ちゃんと二人で暮らしてるらしかった。

そうだ、思い出した。

オイラがウチはとーちゃんが居ないんだ、って言ったら、ケン君がウチはどっちも居ない、って話した記憶がある。
学校が終わった後、家に一人で居るのがつまんないから、ここで兄ちゃんの帰りを待ってるんだ、って言っていた。


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