テキストサイズ

夜の影

第25章 Child missing

【智side】

公園はブランコと、あとウンテイっていうのかな? 遊具もそのぐらいしかなくて。
水飲み場はあったけどトイレがないから、二人でいつも近くにあった教会でトイレを借りてさ。

ケン君と友達になってからは、かーちゃんを待つ寂しい時間が楽しい時間に変わった。

ブランコに乗って靴を飛ばして、どっちが遠くまで飛ぶかを競争したり、その靴の向きで明日の天気を占ったり。
花壇でダンゴムシを探したりして。

程よく遊び疲れた頃に、隣にあるかーちゃんの会社から終業を知らせる鐘の音が聞こえて来る。

「智~~また来てたの~~?」

かーちゃんが呼んでくれるのが凄く嬉しかった。

でもそのうち、ケン君に対して申し訳ない気がするようになって。

同士のような気持でいたから、一人ぼっちにする気がしてさ。

だから、帰る時はいつも何回も名前を呼び合った。

たまにケン君のお兄ちゃんが先に迎えに来ることもあって、多分、あのお兄ちゃんがサカモトさんじゃないだろうか。

「サトシくん、今日はぼく先に帰るね」

自慢のお兄ちゃんだったんだろうな。

嬉しそうな顔で得意気にケン君が言うと、お兄ちゃんは毎回、オイラと目の高さを合わせて訊いてくれた。

「もう夕方だし送ってあげるよ。
おウチはどこ? 一緒に帰ろうね」

「かーちゃんがあの会社ではたらいてるから待ってる」

そう言うオイラの頭をいつも優しく撫でてくれた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ