テキストサイズ

夜の影

第4章 イン・ザ・ルーム

【翔side】

「ん…ふっ…」

この人、なんだか好い匂いがする。

さっき、外から戻ってきた時。
ソファに寝そべってるこの人に、俺から キ ス した時も思った。

なんの匂いだろ。
懐かしいみたいな…。

グラスに残った氷の欠片を、お互いの 舌 で溶かしながら。
繰り返し唇を重ねるたびに、自分の体が熱くなっていくのが判る。

これまで、こんなに キ ス に夢中になったことって、ないんじゃないか。





「ん…」

チュッ、っと音がして 唇 が離れるたびに、鼻にかかった声が漏れる。

自分の声なのか、サトシの声なのか。

最後の氷を口に含んだ後、目を閉じてしまったから。
絡み合う音と、舌 の感触ばかりがリアルで、よく分からない。

「んんっ…」

でも、多分、俺の声…。





勢いで味わいもせずに飲み込んだ酒が回ってきたのかもしれない。

冷たかったサトシの 舌 が、だんだん溶けるみたいに柔らかくなっていくような。

躰 の芯が痺れるみたいに、じんわり何かが広がって。
力が抜けていく。

「ショウ…」

指が眉をなぞって。

次いで、睫毛をなぞるのが心地良くて。

自然に口が開いて、サトシの 舌 を待つ。

「ん…」

ほら、優しい感触。
全然、乱暴じゃない。

男と キ ス してるのに。
優しくて…
好い匂いがして…

嫌じゃない。

気 持 ち い い…。

だって、もうすっかり ジ ン ジ ン してて。
自分の 中 心 の形が変わってるのがわかる。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ