夜の影
第27章 眠らないカラダ
【智side】
「ダッ、ダメだよ!!」
二宮カズナリが叫ぶように言った。
「は?」
「こんなことを大野さんにさせるわけにはいかないよ、僕がやる」
早口で言うのが何だか必死で、オイラは本当に意味が分からなくなった。
「ちょっと、ごめん、お前は俺にこれをやって欲しいの? それとも、やらないで欲しいの? どっちなんだよ。
叔父さんの為に手伝って欲しいんだ、って言ってたよな?」
「そうだけどっ、だから。
僕、ここまでのことだって理解してなかったんだ」
「はぁ?」
俺が混乱したまま問うと、ヒガシヤマさんが二宮を呼んだ。
「カズ」
実に面倒そうに。ハッキリ言えば嫌悪感が分かる声の調子で。
オイラも驚いたけど、二宮カズナリの方は、もう顔が怯えていた。
「俺がお前にそうしてくれと頼んだか?
よりにもよって智に声を掛けて、こんなところまで連れて来た。実際それで俺が喜んだと思うか」
「ごっ、ごめんなさい。僕がやれるなら大野さんには頼まなかったんだけど、でも許してもらえないと思ったから」
「当たり前だ。まだ分からないのか。
俺が一番望んでいることをお前は理解しているものと思っていたが、見込み違いだったな。
お前の母親が何故死んだか忘れたか。
なら、帰れ。
無知な子供の世話を引き受ける程、俺は暇じゃない」
無表情にサラリと言った。
オイラは腹違いの弟の様子をそっと窺う。
二宮カズナリは見開いた目に涙をいっぱい溜めて、唇を震わせてる。顔が真っ青だ。
「おい、大丈夫か?」
「…………」
声を掛けると返事をしない代わりみたいに、涙がポロッと零れ落ちた。
慌てたようにパーカーの袖で拭う仕草が、中学生、って感じで可哀相になる。
嗚咽を堪えるように袖を口元に押し当ててた。
「智、お前もだ。
自分の決断の意味をわかってるのか。
そうは見えないが?」
「へっ?」
急にこっちに矛先が向いたから、間抜けな返事をしてしまう。
ヒガシヤマさんはゆっくりと煙草の煙を吐き出してから、また静かに続けた。
「正義感や倫理観は大変結構だが、一度でも関われば世間から逸脱するぞ。この先まともな人生は送れなくなる可能性だってある。
お前自身がそれでも選ぶと言うなら、俺は遣わせてもらうだけだ。
だがお前の人生の責任までは取らない」
「ダッ、ダメだよ!!」
二宮カズナリが叫ぶように言った。
「は?」
「こんなことを大野さんにさせるわけにはいかないよ、僕がやる」
早口で言うのが何だか必死で、オイラは本当に意味が分からなくなった。
「ちょっと、ごめん、お前は俺にこれをやって欲しいの? それとも、やらないで欲しいの? どっちなんだよ。
叔父さんの為に手伝って欲しいんだ、って言ってたよな?」
「そうだけどっ、だから。
僕、ここまでのことだって理解してなかったんだ」
「はぁ?」
俺が混乱したまま問うと、ヒガシヤマさんが二宮を呼んだ。
「カズ」
実に面倒そうに。ハッキリ言えば嫌悪感が分かる声の調子で。
オイラも驚いたけど、二宮カズナリの方は、もう顔が怯えていた。
「俺がお前にそうしてくれと頼んだか?
よりにもよって智に声を掛けて、こんなところまで連れて来た。実際それで俺が喜んだと思うか」
「ごっ、ごめんなさい。僕がやれるなら大野さんには頼まなかったんだけど、でも許してもらえないと思ったから」
「当たり前だ。まだ分からないのか。
俺が一番望んでいることをお前は理解しているものと思っていたが、見込み違いだったな。
お前の母親が何故死んだか忘れたか。
なら、帰れ。
無知な子供の世話を引き受ける程、俺は暇じゃない」
無表情にサラリと言った。
オイラは腹違いの弟の様子をそっと窺う。
二宮カズナリは見開いた目に涙をいっぱい溜めて、唇を震わせてる。顔が真っ青だ。
「おい、大丈夫か?」
「…………」
声を掛けると返事をしない代わりみたいに、涙がポロッと零れ落ちた。
慌てたようにパーカーの袖で拭う仕草が、中学生、って感じで可哀相になる。
嗚咽を堪えるように袖を口元に押し当ててた。
「智、お前もだ。
自分の決断の意味をわかってるのか。
そうは見えないが?」
「へっ?」
急にこっちに矛先が向いたから、間抜けな返事をしてしまう。
ヒガシヤマさんはゆっくりと煙草の煙を吐き出してから、また静かに続けた。
「正義感や倫理観は大変結構だが、一度でも関われば世間から逸脱するぞ。この先まともな人生は送れなくなる可能性だってある。
お前自身がそれでも選ぶと言うなら、俺は遣わせてもらうだけだ。
だがお前の人生の責任までは取らない」