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夜の影

第30章 movin' on

【智side】

食べた後に今度はエステがあった。

「え~もういいよ、オイラ疲れた」

「ダメよ、お肌もアソコもピカピカにしてナンボの世界なんだから。
いいから貴方は寝てなさい。お昼寝してるうちに全部終わってるわ」

バスローブに着替えさせられて、ベッドに乗ってから間もなく、オイラは本当にストンと眠ってしまった。
額をジワーッと撫でられたのが、もうマジで気持ち良くて瞬殺だった。

時々ポコポコと肌に何かが吸いつくような感覚だったり、ひんやりしたものが塗られたりしたのがわかったけど、ずっと気持ち良くうたた寝状態で。

首と肩のマッサージで目が覚めた時にはかなりスッキリしてて、朝起きた時からずっと続いていた不安な感じがキレイに無くなっていた。

眉を整えてもらって、髪をセットして。
バスローブのまま鏡に映るオイラは、自分でも驚くほどに垢抜けている。
肌が白くなって、ツヤツヤしてるというか、全体的に顔の印象が明るくなってた。

「美少年のいっちょ上がり~。
やーん、アタシってやっぱり腕が良いわぁ、まるで王子様みたいよ貴方、素敵~。
レースを着せたいわねぇ~、うふふ」

「スゲェ……自分じゃないみたい」

こういうの映画とかドラマで見るけど、実際に自分がやるとこんな変わるんだ、とビックリする。

女の人が美容にお金を使う理由が解かる。
オイラなんだけど、オイラじゃないみたい。

「じゃ、アキラ、シャワー浴びて来て。下だけでいいわ」

呆然と見ていたら、ヒロさんが妙なことを言った。

「……は?」

鈍い俺でも一応学習能力はある。
昨夜は言われるままにシャワーを浴びたらとんでもないことになった。
まさか、ここでも何かヤラシイことをされるんじゃないだろうな?

「なんでシャワー? 俺別にイイ」

「あ、そう?
貴方がいいならそれでもいいけど。
じゃ、ベッドにどうぞ」

「終わりじゃないの?」

「まだよ、下のお手入れが残ってるでしょ」

シタのお手入れ……。

「そ、それは、どういう」

言いながら後ずさりしていくと、ヒロさんは、おや? という顔をした後でニンマリ笑った。

「上だけキレイにして終わりじゃないの。
お客様に見せるところは全部美しく整えるのが礼儀よ。
ボーボーはまずいでしょ。さ、いらっしゃい」

「やだっ!!」

理解したと同時にオイラは叫んでた。


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