夜の影
第32章 愛に似たもの
【智side】
じーちゃんが遺言で、家と土地は絶対に手放すな、って言ってて。
死ぬ直前にも、オイラに「頼む」って言ったくらいだったし、かーちゃんも、絶対に売らない、って言ってた。
元よりオイラの家はあそこで、他に行く場所もない。
だけど、まさか一人っきりになるなんて、想像もしてなかった。
『かーちゃん頑張って働くから、智も一緒に家と土地を守ってね』
じーちゃんが死んだ後、土地を売らないか、ってどっかの営業の人が来て。
そん時も、かーちゃんは「絶対に売りませんから」って、キッパリ断ってた。
ばーちゃんの介護で、お金かかってたのに。
だからオイラも、あの家は絶対に守らなくちゃいけない。
だけど。
だけど、一人はしんどいよ、かーちゃん。
オイラ、高卒で何の資格も技術もないし、稼げる金なんて高が知れてる。
守るために一体どうしたらいい?
借金があるわけじゃないけど、家を守れるのかな。
もしもオイラが躰を売ることを仕事にしたら、かーちゃん、ガッカリするよね?
でも。
でも俺、これ以上一人で居たくない。
どうしたら、ここに置いてもらえるんだろう。
ああ、そうか。
わかった。
だから、二宮カズナリもあんなに必死だったんだ。
あの人の傍に居たくて、必死なんだ。
そっか。
アイツも一人ぼっちなんだな……。
オイラ、嫌なヤツになってるなぁ……。
純粋にケン君を助けたいと思ったからなのに、今は利用しようとしてる。
アイツ、二宮カズナリも、同じなのか。
人って、あんまり淋しいと、誰かを使ってでも温もりを得ようとするのかも。
これじゃぁ、きっと、かーちゃんに怒られる……。
「サトシ、お待たせ~。
うどん出来たわよぅ~」
目を閉じて、半分眠ってるような状態でうつらうつらしてたら、ヒロさんの元気な声がした。
自分の浅ましい考えが情けなくて、オイラはそのまま寝たふりを続ける。
「あら、寝ちゃったのかしらん」
枕もとで覗き込まれる気配がして。
「…………」
顔を手で拭われた。
「かわいそうに……泣いてるじゃない……
大丈夫よ、サトシ、だいじょうぶ……
心配しなくても、何もかも全部良くなるわ……
大丈夫……イイコね……」
子供みたいに頭を撫でられながら、オイラは優しい眠りの中に落ちていった。
じーちゃんが遺言で、家と土地は絶対に手放すな、って言ってて。
死ぬ直前にも、オイラに「頼む」って言ったくらいだったし、かーちゃんも、絶対に売らない、って言ってた。
元よりオイラの家はあそこで、他に行く場所もない。
だけど、まさか一人っきりになるなんて、想像もしてなかった。
『かーちゃん頑張って働くから、智も一緒に家と土地を守ってね』
じーちゃんが死んだ後、土地を売らないか、ってどっかの営業の人が来て。
そん時も、かーちゃんは「絶対に売りませんから」って、キッパリ断ってた。
ばーちゃんの介護で、お金かかってたのに。
だからオイラも、あの家は絶対に守らなくちゃいけない。
だけど。
だけど、一人はしんどいよ、かーちゃん。
オイラ、高卒で何の資格も技術もないし、稼げる金なんて高が知れてる。
守るために一体どうしたらいい?
借金があるわけじゃないけど、家を守れるのかな。
もしもオイラが躰を売ることを仕事にしたら、かーちゃん、ガッカリするよね?
でも。
でも俺、これ以上一人で居たくない。
どうしたら、ここに置いてもらえるんだろう。
ああ、そうか。
わかった。
だから、二宮カズナリもあんなに必死だったんだ。
あの人の傍に居たくて、必死なんだ。
そっか。
アイツも一人ぼっちなんだな……。
オイラ、嫌なヤツになってるなぁ……。
純粋にケン君を助けたいと思ったからなのに、今は利用しようとしてる。
アイツ、二宮カズナリも、同じなのか。
人って、あんまり淋しいと、誰かを使ってでも温もりを得ようとするのかも。
これじゃぁ、きっと、かーちゃんに怒られる……。
「サトシ、お待たせ~。
うどん出来たわよぅ~」
目を閉じて、半分眠ってるような状態でうつらうつらしてたら、ヒロさんの元気な声がした。
自分の浅ましい考えが情けなくて、オイラはそのまま寝たふりを続ける。
「あら、寝ちゃったのかしらん」
枕もとで覗き込まれる気配がして。
「…………」
顔を手で拭われた。
「かわいそうに……泣いてるじゃない……
大丈夫よ、サトシ、だいじょうぶ……
心配しなくても、何もかも全部良くなるわ……
大丈夫……イイコね……」
子供みたいに頭を撫でられながら、オイラは優しい眠りの中に落ちていった。