夜の影
第36章 裏・返し
【智side】
「ヨシ、言う通りにしたな。
大野智、今からお前は自分の名前を言うことが出来なくなる。
名前を訊かれたら、アキラとしか言えない。
繰り返して言え」
「じ、自分の名前を、言えない。
訊かれたら、アキラって言う」
「もう一度」
「自分の名前を言えない」
指を鳴らす音がパチンと聴こえた。
「訊かれたらアキラって言う」
パチン。
一定のリズムで指が鳴らされてる。
その音がやけにハッキリ聴こえて。
「お前の名前はアキラ。繰り返せ」
パチン。
「ぼ、僕の名前はアキラ」
パチン。
「イイコだ。もう一度」
パチン。
「僕はアキラ」
パチン。
「スマホの番号は? 個人のスマホだ」
パチン。
スマホ?
オイラのスマホの番号は……。
パチン。
「あ、090の****-****」
パチン。
え、番号言って良かったのかな……。
でも、ヒガシヤマさんの命が……。
パチン。
「お前はここで俺に会ったことは忘れる」
パチン。
拳銃は……。
「ここで……会ったことは……」
指が鳴って……銃は……。
パチン。
「抵抗するな。ヒガシヤマが死ぬぞ」
ダメ……それはダメ……。
「ここで俺に会ったことは忘れる」
パチン。
「ここで、会ったことは、忘れる」
パチン。
「イイコだ。ゆっくり100数えたら目を開けて座敷に戻るんだ」
パチン。
100数えて……目を開ける……。
パチン。
「さぁ、数を数えるぞ。
いーち、にー、さーん、しー」
パチン。
声に続けて、オイラは頭の中で数を数え始めた。
ごー、ろーく、しーち、はーち……。
100まで数えて目を開ける。
何気なく手を見たら、石鹸の泡? が付いてた。
え?
オイラ、どうしたんだっけ?
なんで個室?
しかもドアは開いてるし、手に泡?
「何これ?」
不思議に思いながら洗面台に向かって、泡を落とした。
部屋に戻らなくちゃ。
無性にヒガシヤマさんの顔が見たかった。
「ヨシ、言う通りにしたな。
大野智、今からお前は自分の名前を言うことが出来なくなる。
名前を訊かれたら、アキラとしか言えない。
繰り返して言え」
「じ、自分の名前を、言えない。
訊かれたら、アキラって言う」
「もう一度」
「自分の名前を言えない」
指を鳴らす音がパチンと聴こえた。
「訊かれたらアキラって言う」
パチン。
一定のリズムで指が鳴らされてる。
その音がやけにハッキリ聴こえて。
「お前の名前はアキラ。繰り返せ」
パチン。
「ぼ、僕の名前はアキラ」
パチン。
「イイコだ。もう一度」
パチン。
「僕はアキラ」
パチン。
「スマホの番号は? 個人のスマホだ」
パチン。
スマホ?
オイラのスマホの番号は……。
パチン。
「あ、090の****-****」
パチン。
え、番号言って良かったのかな……。
でも、ヒガシヤマさんの命が……。
パチン。
「お前はここで俺に会ったことは忘れる」
パチン。
拳銃は……。
「ここで……会ったことは……」
指が鳴って……銃は……。
パチン。
「抵抗するな。ヒガシヤマが死ぬぞ」
ダメ……それはダメ……。
「ここで俺に会ったことは忘れる」
パチン。
「ここで、会ったことは、忘れる」
パチン。
「イイコだ。ゆっくり100数えたら目を開けて座敷に戻るんだ」
パチン。
100数えて……目を開ける……。
パチン。
「さぁ、数を数えるぞ。
いーち、にー、さーん、しー」
パチン。
声に続けて、オイラは頭の中で数を数え始めた。
ごー、ろーく、しーち、はーち……。
100まで数えて目を開ける。
何気なく手を見たら、石鹸の泡? が付いてた。
え?
オイラ、どうしたんだっけ?
なんで個室?
しかもドアは開いてるし、手に泡?
「何これ?」
不思議に思いながら洗面台に向かって、泡を落とした。
部屋に戻らなくちゃ。
無性にヒガシヤマさんの顔が見たかった。