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夜の影

第37章 裏・返し2

【智side】

肩に腕が回って、顔をじっと見つめられながら、髪を撫でられた。丁寧な手つきで、酷いことをされる感じは今のところしない。

「君はどうしてこの仕事をすることになったの?」

「え……あの……」

「言える範囲でいいよ、教えて欲しいな」

懐かせようとする、猫撫で声。

「僕、家族が居ないから……」

「そうなんだね。
暁のアキラは家庭に事情がある子が多い、ってのは本当なんだ。
じゃぁ男が好きなわけじゃないの?
今まで誰かとお付き合いしたことは?」

「あ、ない、です」

「じゃぁ、正真正銘、綺麗な躰なんだね。
良かった、それなら安心だ」

安心、って。
性病とかを心配してるのかな。
失礼な人だ。

にっこりと笑って、オイラが着ていたバスローブの合わせ目を広げた。

「うん、綺麗だ」

言って肌に手が触れる。
その触り方が、なんだろ、ちょっと変。
何か確かめてるみたいな……。

「立って、もっと良く見せて」

言われるままに彼の前に立った。
バスローブのベルトを解かれる。

「なんだ、下着を着けて来たのか」

「あ、ダメだったですか?」

「いや、いいよ。脱がせる楽しみがある」

言って下着に手がかかった。
ゆっくり下げられて、露わになる自分自身。
流石に恥ずかしくて、顔が熱くなる。

「あぁ……いいね、素晴らしい……。
これならきっと、上手く行くに違いないよ」

感極まった、て感じの表情。
目がイッてる。
やっぱりこの人、少し変だ。
早いとこ、ワインを飲ませてしまわないと。

「あの、先生」

林さんはオイラの腰を両手で押さえると、繁みの中に顔を埋めて来た。

「あっ、あのっ」

咥えられるのかと思って腰を引いてしまう。
そのまま顔が追いかけてくる。

頬ずりするみたいにスリスリされて、息を吹きかけてくるから、血が集まって来た。

「あぁ、大きくなってきたね。
なんて可愛らしい。
少しだけなら、味見しても許されるだろう」

そう言ってハヤシさんが口を開けた時に、部屋のドアが開いた音がした。

「先生、戻りました!」

入って来たのはさっき出て行った若い男で、オイラとハヤシさんを見て驚いた顔をして固まる。

ハヤシさんが、チッと舌打ちをして、オイラから離れた。


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