夜の影
第37章 裏・返し2
【智side】
慌ててバスローブの前を合わせ、ベルトを巻いた。
ハヤシさんが猫撫で声で言う。
「剛、早かったね、SPも問題なかった?」
「大丈夫です、大人は朝まで起きません。SPも」
何の話だろう。
「あの、先生……」
「ああ、アキラ、この子はね僕のアシスタントをしてる剛だよ。
日本人で、優秀なヒプノセラピストなんだ。
陳大人の治療でね、ちょっとあちらに行かせてた」
「そう、なんですか」
一応頭を下げたら、笑い返して来る。
渋谷とかに居る普通のお兄ちゃん、って感じだけど、若いのに助手なんだ。
「ヒプノ……って?」
「日本語では催眠療法って言う。
やってみたことない?」
「ないです」
「それなら丁度良い。
剛、アキラは病み上がりだし、大分緊張してるから、少しリラックスさせてあげて。
ベッドルームへ行こう」
「わかりました」
ゴウって人が頷くと、ハヤシさんが立ち上がってオイラの背中を押す。
「あっ、先生。
あの、ワインを持って行きましょう?
ウチの社長からなので……」
「ああ、そうだね。
剛、それ持って来て」
寝室へ入ると、ゴウと呼ばれた人がグラス二つにワインを用意してくれる。
ベッドに腰掛けたオイラと、一人掛けの椅子に座ったハヤシさんと。
「乾杯」
立ち上がってグラスを合わせた。
彼の喉仏が動いたのを見て、ホッとする。
オイラは飲んだ振りだ。
アシスタントさんは何故だかオイラの隣、ベッドに一緒に腰掛けていた。
「アキラは寝つきは良い方なの?
お昼寝とか、うたた寝は良くする?」
ハヤシさんに質問される。
「はい、割とすぐ寝ちゃいます」
「学校の授業中とか、偉い人の話を聴いて寝ちゃったり?」
「あ、そうですね。多いかもしれないです」
実はオイラの特技はどこでも寝れることだった。
つまんないとすぐ眠くなっちゃうから、学校では特に居眠りばかりしてて。
ハヤシさんがニコニコと笑って頷いた。
「それなら、催眠にはかかりやすいね。
剛、始めて」
アシスタントさんがオイラの手からグラスを取り上げた。
「あ、何……」
「落とすと危ないから」
え? どういうこと?
テーブルにグラスを置いた手が、オイラの顔を覆った。
慌ててバスローブの前を合わせ、ベルトを巻いた。
ハヤシさんが猫撫で声で言う。
「剛、早かったね、SPも問題なかった?」
「大丈夫です、大人は朝まで起きません。SPも」
何の話だろう。
「あの、先生……」
「ああ、アキラ、この子はね僕のアシスタントをしてる剛だよ。
日本人で、優秀なヒプノセラピストなんだ。
陳大人の治療でね、ちょっとあちらに行かせてた」
「そう、なんですか」
一応頭を下げたら、笑い返して来る。
渋谷とかに居る普通のお兄ちゃん、って感じだけど、若いのに助手なんだ。
「ヒプノ……って?」
「日本語では催眠療法って言う。
やってみたことない?」
「ないです」
「それなら丁度良い。
剛、アキラは病み上がりだし、大分緊張してるから、少しリラックスさせてあげて。
ベッドルームへ行こう」
「わかりました」
ゴウって人が頷くと、ハヤシさんが立ち上がってオイラの背中を押す。
「あっ、先生。
あの、ワインを持って行きましょう?
ウチの社長からなので……」
「ああ、そうだね。
剛、それ持って来て」
寝室へ入ると、ゴウと呼ばれた人がグラス二つにワインを用意してくれる。
ベッドに腰掛けたオイラと、一人掛けの椅子に座ったハヤシさんと。
「乾杯」
立ち上がってグラスを合わせた。
彼の喉仏が動いたのを見て、ホッとする。
オイラは飲んだ振りだ。
アシスタントさんは何故だかオイラの隣、ベッドに一緒に腰掛けていた。
「アキラは寝つきは良い方なの?
お昼寝とか、うたた寝は良くする?」
ハヤシさんに質問される。
「はい、割とすぐ寝ちゃいます」
「学校の授業中とか、偉い人の話を聴いて寝ちゃったり?」
「あ、そうですね。多いかもしれないです」
実はオイラの特技はどこでも寝れることだった。
つまんないとすぐ眠くなっちゃうから、学校では特に居眠りばかりしてて。
ハヤシさんがニコニコと笑って頷いた。
「それなら、催眠にはかかりやすいね。
剛、始めて」
アシスタントさんがオイラの手からグラスを取り上げた。
「あ、何……」
「落とすと危ないから」
え? どういうこと?
テーブルにグラスを置いた手が、オイラの顔を覆った。