夜の影
第40章 恋
【紀之side】
俺が言った内容を吟味するように暫く間が空いたが、不意に銃口が額から外れた。
持ち慣れない代物なら、さぞかし重かっただろう。
こちらもそれで気が楽になったのか、気づくと耳鳴りが消えていた。
まだ銃をしまったわけじゃない、緊張を解くな、と自分に言い聞かせる。
「一緒に逃げられるならそうした。
単に確率の問題だよ。
あいつ一人の方が見逃される率が高い。
今の俺は教団にとって使い道がある道具だ。
逆に健にはもうあまり価値がない。
執着してるのは林だけだからな」
若いのに、そういうタイプなのか、顔にあまり気持ちが出ない。
生き延びるのに必要で身についたのか。
逆に絶望感が伝わってきた。
二十歳やそこらで。
違う人生があったものを。
「……お前も来い」
「俺は行かない」
即答だった。
「アンタが健の兄貴のパートナーでも、俺からしたら関係ない他人だ。
信じない。
時間つぶしに遊んだだけだ、もう行けよ」
「智は」
「健が会いたがったから昼間の公園に行かせた。
まだ居るかどうかは知んねぇよ。
あいつにはアンタと縁を切れと言った」
疲れたように急に声に張りが無くなった。
もう一度、来いというべきか迷って止める。
恐らく信じないだろう。
「……公園だな、教えてくれて感謝する」
「なんでアキラ?」
言われた意味が理解出来ずに相手を見た。
「暁の男娼は全員アキラって名乗るんだろ?
アニメでもあるまいし、なんでアキラ?」
「ああ、ふっ」
子供らしい問いに思わず笑った。
「友人の名だ。
もうこの世には居ないが、学生の頃に告白された。
ウチの玉にアキラと名付けるのは罪滅ぼしさ。
あいつみたいに死なせたくない」
適当な話題で俺を引き留めたのは、コイツにも迷いがあるからか。
「お前、俺と一緒に行かないか」
「ふん、俺はアキラになる気はない。行きな」
顎で促されて、その場を離れた。
俺が言った内容を吟味するように暫く間が空いたが、不意に銃口が額から外れた。
持ち慣れない代物なら、さぞかし重かっただろう。
こちらもそれで気が楽になったのか、気づくと耳鳴りが消えていた。
まだ銃をしまったわけじゃない、緊張を解くな、と自分に言い聞かせる。
「一緒に逃げられるならそうした。
単に確率の問題だよ。
あいつ一人の方が見逃される率が高い。
今の俺は教団にとって使い道がある道具だ。
逆に健にはもうあまり価値がない。
執着してるのは林だけだからな」
若いのに、そういうタイプなのか、顔にあまり気持ちが出ない。
生き延びるのに必要で身についたのか。
逆に絶望感が伝わってきた。
二十歳やそこらで。
違う人生があったものを。
「……お前も来い」
「俺は行かない」
即答だった。
「アンタが健の兄貴のパートナーでも、俺からしたら関係ない他人だ。
信じない。
時間つぶしに遊んだだけだ、もう行けよ」
「智は」
「健が会いたがったから昼間の公園に行かせた。
まだ居るかどうかは知んねぇよ。
あいつにはアンタと縁を切れと言った」
疲れたように急に声に張りが無くなった。
もう一度、来いというべきか迷って止める。
恐らく信じないだろう。
「……公園だな、教えてくれて感謝する」
「なんでアキラ?」
言われた意味が理解出来ずに相手を見た。
「暁の男娼は全員アキラって名乗るんだろ?
アニメでもあるまいし、なんでアキラ?」
「ああ、ふっ」
子供らしい問いに思わず笑った。
「友人の名だ。
もうこの世には居ないが、学生の頃に告白された。
ウチの玉にアキラと名付けるのは罪滅ぼしさ。
あいつみたいに死なせたくない」
適当な話題で俺を引き留めたのは、コイツにも迷いがあるからか。
「お前、俺と一緒に行かないか」
「ふん、俺はアキラになる気はない。行きな」
顎で促されて、その場を離れた。