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夜の影

第10章 サトシ

【智side】

バッチが会話を禁じられてるのには、お互いに相手のことを知りすぎないため、って理由もある。

基本的にここに所属してる俺達「玉」は、単独で動くから交流を持たない。

所属している奴ら全てを把握してるのは、社長とカズだけだし。

バッチにしたって仕込みだけの関係で、その後に連絡を取り合うことは禁じられてる。

通常は、仕込みが終わってしまえば、それきり接点はなくなる。

俺の役目は、本来、新人が男に 躰 を 開くのに慣れさせることと。

資質があるかどうか見極めること。





なんだけど。

俺は、しがみついてくるショウを抱きしめながら考えてた。

こいつには、させられないなぁ、って。

出来ないことはないだろう。

でも、傷つき過ぎてる。

自分の人生に戻れなくなるんじゃないか。

不幸なまま、沈んで、戻って来られなくなるんじゃないか。

そんな気がする。





自分自身をショウに重ねているだけのことかもしれないし。

俺が気にしたってしょうがないことだ。

でも。
こんなことを考え出した時点で、もう駄目だな。

ほだされてる。





男同士でやるのに「資質」ってなんだ、って話だけど。
社長の目的は 男 娼 の元締めで儲けることじゃない。

玉が持ち帰ってくる情報を元にして各国の動きを予測し、ビジネス上の参考情報として取引に使ってる。

だから、玉の本当の仕事はやることじゃなく、先方の様子を記憶して持ち帰ること。

相手のところに行って、やって。
そこで見聞きしたことを漏らさずに全て報告する。

別に俺たちは、何かを探れ、って命じられるわけじゃない。

先方に行って、細かいスケジュールや、来日の目的について見聞きしたことを報告するだけだ。

誰と会っていたか、とか、どんな様子だったか、とか。

どんな些細なことでも、気がついたことは全部。
何が重要なのか、いらないことなのか、って判断は、むしろしてはいけない。

それで、資質、ってことになる。







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