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夜の影

第11章 The first man

【翔side】

立たせて、って言うから、サトシを立たせて、二人で服を着て。

リビングに移動する間、心配だから、サトシの腰に手を回して並んで歩いた。

やめろ、って言われるかと思ったけど、言われなくてホッとした。

ソファのところのテーブルにあったメニューを見て出前を頼んで。

出してもらったミネラルウォーターを飲みながら待ってる間、サトシは長い方のソファに寝そべってスマホを見てた。





今日は二宮君は居ない。

デスクに乗ってたノートPCが一台無くなってた。

俺はすることもなくて、手持ち無沙汰だから。
床に直接座ってソファに肘を乗せ、スマホを見てるサトシの顔をなんとなく見てる。

テレビ点けてもいいよ、って言われたけど、世の中のことなんて、もうどうでも良かったし。

自分のスマホは機内モードのままだ。





サトシは何を見てんだろ、って思って、そーっと画面を覗く。

釣 り?
ふーん、釣 り する人なんだ…。

思ってたら、腕が伸びてきて頭を撫でてくれた。
優しい触り方に、自分がペットになったような気がしてくる。

一緒に住んだらこんな感じなのかな…。





「ショウ君や」

なんか、タマちゃんや、とか、トラや、とか動物を呼ぶみたいに呼ばれてるし。

「キッチンに行ってクラッシュアイス作ってくれると嬉しいなぁ」

くらっしゅあいす、作る?
え、どうすんだろ。

「ミキサーに氷を入れてスイッチ入れればいいだけ
冷蔵庫に氷いっぱいはいってるから
結構すごい音するけどビビんなよ
ちゃんと蓋しないと危ないかんな」

了解の意味で頷いてから、キッチンに向かった。





やっぱり貧血からくる氷食症なんだろうな。
仕込みが終わって話せるようになったら、ちゃんと鉄分を取って、治療するように言わなくちゃ。

恐る恐るスイッチをオンにしたミキサーからは物凄い音がして、マジで結構ビビった。

平気な振りでグラスに氷を入れて戻ると、サトシは俺の顔を一目見て吹き出した。

「怖かったんだろ?」

ニヤニヤして言うから、全然、って首を振ってやった。




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