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夜の影

第11章 The first man

【智side】

外階段を上りながら、急にバッチを任されたことといい、二日連続の呼び出しといい、何か良くない知らせがあるような予感がして、俺はガードを固める。

社長に対してではない。

これから知ることになるであろう、正体のわからないものに対して、いつでも反応できるようにモードを切り替えた。

ショウのことは一先ず置いておくことになるかもしれない。





部屋に入った途端、普段はいない筈のメンツが揃っていたから、予感が的中していたことを知る。

マツオカさんとナガセさんだ。

この二人は社長が仕事で最も信頼してる部下。

二人して躰がデカイから部屋が狭く感じる。

「お疲れ様です」

型通りの挨拶をすると、二人は口だけでニッと笑った。

いつもなら軽口の一つや二つ出るのに、妙に緊張してる。





ソファの定位置に座った社長は新聞を読んでいたが、いつにも増して顔が青白かった。

ひょっとして…。

「おい、具合は?」

のっけから社長に言い放った俺にナガセさんがギョッとして、無言でこっちを睨む。

「智、まずは社長の話を聞け」

マツオカさんに注意された。

黙っていたら、社長が新聞に目を落としたまま静かに話し出した。





「最後のターゲットの居所がわかった」





で?

と思って、俺は黙ったまま話の続きを待つ。

ターゲットというのは、カズの母親を死に至らせ、父親を一族から追い出した連中のことだ。

二宮家は古くから続く公家の家系で、華族を経て、戦後は財閥と結んで幅広く事業をしている。

長男だったカズの父親は、相続の争いに敗れて、一族から追放された形になっていた。
現在は次男が当主。

カズの父親=つまり俺の父でもあるんだけど。

俺は、数えるほどしか会ったこともないし、正直、父親だと思ったことは一度もない。




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