夜の影
第11章 The first man
【智side】
社長の向い側にある長い方のソファに、マツオカさんとナガセさんが座ってる。
社長の隣の席が空いていたが、カズ以外にそこへ座る奴は居ない。
俺は座れとも言われなかったし、いつものように敢えて社長とは距離を置いて突っ立ってた。
視線を合わせないまま社長が言う。
「心配しなくても、お前とカズのことは考えてある」
新聞を読んでる振りをしてるけど、目が記事を追っていない。
「ここと下の部屋はお前たちに遺す
会社のことはマツオカに任せるが
全て終わればお前たちは従業員ではなくなる
会社とは無関係だ、わかるな?」
「おい、そういうことじゃないだろ
アンタが居なくなったらカズは誰を頼る?」
便宜上、俺達玉は社長の飲食店に勤める従業員の形をとってるから。
それを無かったことにする、というのはカズを表の世界に戻すためだろう。
だが、カズが今更家に帰れるのか?
アンタを頼り切って、兄貴みたいに慕ってるのに。
遺す、って。
「何か困ったことがあればコクブンに相談しろ
弁護士のコクブンは分かるな?」
「アンタ、最後のターゲットを仕留めたら戻って来ないつもりなんだろ」
「智」
ずけずけと言った俺の名をナガセさんが呼ぶ。
余計なことを言うな、と言わんばかりに。
マツオカさんを見ると、黙ったまま首を左右に振った。
この人も社長に仕込まれて玉をやってた人だから。
いざとなると言葉を使わなくなる。
『智、社長はもう全て決めてしまった
俺達に出来ることは邪魔をしないことだけなんだよ』
まるでサイキックみたいに、マツオカさんが言いたいことが悲しみをともなって伝わってきた。
『この人が病院で大人しく俺たちに看取らせると思うか
好きなようにさせてやるしかないんだ』
俺とマツオカさんの気配に気づいている筈なのに。
社長はどこまでも素知らぬ振りだ。
コイツは、いつだってこうして自分で何もかも決めて。
俺らの言うことなんか、全く聞く耳を持たない。
きっと俺らの気持ちなんて歯牙にもかけずに。
全部自分で終わらせて居なくなるつもりだ。
社長の向い側にある長い方のソファに、マツオカさんとナガセさんが座ってる。
社長の隣の席が空いていたが、カズ以外にそこへ座る奴は居ない。
俺は座れとも言われなかったし、いつものように敢えて社長とは距離を置いて突っ立ってた。
視線を合わせないまま社長が言う。
「心配しなくても、お前とカズのことは考えてある」
新聞を読んでる振りをしてるけど、目が記事を追っていない。
「ここと下の部屋はお前たちに遺す
会社のことはマツオカに任せるが
全て終わればお前たちは従業員ではなくなる
会社とは無関係だ、わかるな?」
「おい、そういうことじゃないだろ
アンタが居なくなったらカズは誰を頼る?」
便宜上、俺達玉は社長の飲食店に勤める従業員の形をとってるから。
それを無かったことにする、というのはカズを表の世界に戻すためだろう。
だが、カズが今更家に帰れるのか?
アンタを頼り切って、兄貴みたいに慕ってるのに。
遺す、って。
「何か困ったことがあればコクブンに相談しろ
弁護士のコクブンは分かるな?」
「アンタ、最後のターゲットを仕留めたら戻って来ないつもりなんだろ」
「智」
ずけずけと言った俺の名をナガセさんが呼ぶ。
余計なことを言うな、と言わんばかりに。
マツオカさんを見ると、黙ったまま首を左右に振った。
この人も社長に仕込まれて玉をやってた人だから。
いざとなると言葉を使わなくなる。
『智、社長はもう全て決めてしまった
俺達に出来ることは邪魔をしないことだけなんだよ』
まるでサイキックみたいに、マツオカさんが言いたいことが悲しみをともなって伝わってきた。
『この人が病院で大人しく俺たちに看取らせると思うか
好きなようにさせてやるしかないんだ』
俺とマツオカさんの気配に気づいている筈なのに。
社長はどこまでも素知らぬ振りだ。
コイツは、いつだってこうして自分で何もかも決めて。
俺らの言うことなんか、全く聞く耳を持たない。
きっと俺らの気持ちなんて歯牙にもかけずに。
全部自分で終わらせて居なくなるつもりだ。