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夜の影

第12章 愚か者

【翔side】

「ちょっと事務的なお話があります
返事をしなくてもいいですから、取りあえず聞いてください」



二宮君は定位置なんだろう、PCデスクにカップを置いて、椅子をこちらに回転させる。

尻を向けたままでは失礼だから、一応俺も座り直して彼の方を向いた。



「翔さんに都合する金額の話ですが…
ちょっと確定するのに時間がかかりそうなんです

今回、借 金 返 済 のため、とのことだったので
債 務 整 理 を含めて、会社の法務をお願いしている 司 法 書 士 が調査を始めたのですが

お預かりした 借 用 書 ですけれども偽物の疑いがあるそうです

ご自宅の 差 押 え も、それ自体がされていない可能性がある」



「……は?……」



俺は持ちあげてたコーヒーカップを思わずソーサーに戻した。

言われてる意味が理解できなくて、頭がついて行かない。



差 押 え がされていない?



だって、あの時、裁 判 所 の書類を顔の前に突き付けられて。

今すぐ出ていけ、って。



「詳しいことは調査の結果次第ですが…

考えられることとしては

ご自宅にある筈の何かを探す必要があった

その為に裁 判 所 の職員や、町 金 を騙ってご家族を家から遠ざけた

そういうことではないかと

何かお父様のお仕事に関連して記録になるようなもの

心当たりはないですか?」



「…………」



俺は、黙ったままで首を振る。

わからない。

でも、無かったと思う。

少なくとも、俺は知らない。

父が亡くなった後、日記とかがあるかもしれない、って母が書斎とかいろいろ探してた筈だけど。

何かが見つかった、って話は聞いていなかった。






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